研究課題/領域番号 |
20K09064
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
岩谷 岳 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (70405801)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 消化管癌 / circulating tumor DNA / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
ゲノム情報に基づき個々人に最適な医療を提供する「がんゲノム医療」は大きな期待がよせられているが、実施施設の増加や体制整備が進む中その課題点も明らかとなってきている。遺伝子パネル検査では遺伝子変異は見つかるもののActionableな変異は少なく、直近の報告でもゲノム検査から治療に到達した割合は10%以下と低い。ゲノム医療の介入前後で治療効果のリアルタイムな評価や効果予測が正確に行える検査法が必要と考えられた。腫瘍細胞由来の血中遊離DNA (Circulating tumor DNA: ctDNA)は症例特異的な血液バイオマーカーとして注目されている。がん患者の血液検体での遺伝子パネル検査も国内承認となったが、検査結果返却スピードは早まることが期待されるが、治療到達割合には大きな変化はないものと思われる。われわれは原発巣組織の遺伝子パネルを用いた変異スクリーニングにより検出された症例特異的変異に対しそれぞれ変異検出Probeを作成し、digital PCRを用い効率的にctDNAモニタリングするシステムを構築している。本研究では消化管癌を対象とし少数の症例特異的変異を標的としたdigital PCRによるctDNAモニタリング検査が日常がん診療におけるルーチン検査となりうるか、また本システムのゲノム医療における介入方法について検討している。食道癌では化学療法1サイクル後のctDNAが10%程度まで下降すると、画像診断に比べ正確にその後の治療効果を予測できること、当該化学療法の持続期間が長いこと、全生存率が良好であることを明らかにしている。ctDNA変化にもとづき早期に治療変更を行う介入研究を準備中である。また、大腸癌ではctDNAが再発・無再発を正確に判定できることから、術後サーベイランスのCT検査を減少できるかを検証中である。ゲノム検査で検出されたNonactionableな変異について、ctDNAを用いた複数の有効な利用方法の開発にむけて研究が進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ctDNA解析用の採血管の価格上昇や症例特異的変異検出用のProbe/Primerの作製の増加により、採血量や解析変異数を減少して研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進行しており、集積中のサンプルについて順次解析を進める。症例数や観察期間の延長により、われわれのctDNAモニタリングシステムが、早期再発発見、正確で早期の治療効果判定、無再発診断への妥当性がより強く示され、がん患者の日常臨床における検査システムを大きく変えることが大きく期待される。ctDNA検査における治療変更や既存検査の削減、早期再発治療開始などの介入により、患者に実際にどのような有用性が示されるかを検証し、より早い臨床応用をめざしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響もあり、原発巣の次世代シークエンス解析を行う共同研究施設へのサンプル輸送や解析の遅れがあった。また、現在も採血管、デジタルPCRチップ、その他研究用の試薬は在庫なく、発注ができない状況が多々生じている。いずれもまとめて注文する方がコストを削減できるので、状況の好転を待ち次年度に解析を持ち越している。
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