研究課題/領域番号 |
20K09066
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
佐々木 洋子 帝京大学, 薬学部, 講師 (90324110)
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研究分担者 |
山下 純 帝京大学, 薬学部, 教授 (80230415)
佐々木 紀彦 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (80639063)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がん転移 / リン脂質 / 大腸がん / 質量分析 |
研究実績の概要 |
近年、がん細胞ではホスファチジルコリン (PC) やホスファチジルエタノールアミン (PE) の生合成が変化していることが報告されているが、転移との関わりは未解明である。研究代表者らは、同系マウスの大腸がん肝転移モデルを樹立し、高転移株では親株と比較して、PCやPEの脂肪酸リモデリングに関わるリゾリン脂質アシル転移酵素遺伝子の発現量が低いことを発見した。本研究では、PCやPEのde novo合成だけでなく脂肪酸リモデリングにも着目し、リゾリン脂質アシル転移酵素によるPCやPEの量的、質的な変化が、大腸がんの肝転移をどのように制御しているかを、細胞レベルとマウスの個体レベルで解明することを目的としている。 2020年度は、PCおよびPEを質量分析により測定する系を確立した。この系を用い、マウスおよびヒトの大腸がん細胞株において、高転移性の亜株と親株を比較し、PCやPEの特定の分子種に差異が認められることを明らかにした。この結果は、PCやPEの脂肪酸リモデリングが、がんの転移を制御する可能性を強く示唆している。 今後は、リゾリン脂質アシル転移酵素の阻害剤で処理した細胞株や、酵素遺伝子をノックダウンした細胞株を用い、PCやPEなどの質量分析や、in vitroにおける細胞の増殖性、運動性、浸潤性、in vivoにおける転移性などの解析を行う。以上の研究結果を総合し、PCやPEのde novo合成および脂肪酸リモデリングと、がん転移との関わりを詳細に明らかにしていく。 本研究により、難治性の転移性大腸がんに対し、新規の治療法を開発するための基礎研究基盤が確立されると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とは研究の順番を変更したが、2020年度は質量分析によりホスファチジルコリン (PC)、およびホスファチジルエタノールアミン (PE) を測定する系を確立した。この系を用い、マウスおよびヒトの大腸がん細胞株において、高転移性の亜株と親株を比較し、PCやPEの特定の分子種に差異が認められることを明らかにした。 以上の理由から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に確立したホスファチジルコリン (PC) およびホスファチジルエタノールアミン (PE) の質量分析測定系を用い、リゾリン脂質アシル転移酵素の阻害剤で処理した細胞株や、酵素遺伝子をノックダウンした細胞株などのPCやPEの変化を分析する。リゾPCやリゾPEの質量分析測定系も確立し、リゾリン脂質アシル転移酵素遺伝子の発現とPC、PE、リゾPC、リゾPEの量的関係を明らかにする。 また、酵素遺伝子のノックダウンを行った細胞株などで、in vitroにおける細胞の増殖性、運動性、浸潤性、in vivoにおける転移性などの解析を行う。 以上の研究結果を総合し、PCやPEのde novo合成および脂肪酸リモデリングと、がん転移との関わりを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:当初の計画から実験の順番を変更して行ったことにより、2020年度の消耗品代金が少なくなったため。 使用計画:2021年度は新規の実験系が多くなる予定であり、消耗品代金が増えると考えられる。
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