研究課題
膵癌周辺の肉眼的正常膵に分布する微小膵管内病変の遺伝子変異プロファイルを取得することにより、膵発癌素地(premalignantfield defect)並びに、発癌・進展・再発様式の多様性を明らかにするという目的に沿って、通常型膵癌1例、IPMN由来浸潤癌1例、非浸潤性IPMN1例の切除例に対して、背景膵病変の徹底解析を行った。具体的には上記それぞれ88,41,91病変の形態分類とマッピング、DNA採取と変異解析を終了している。ここまでの中間解析により今後の研究推進方法に対して必要な改良を協議した。多数病変を効率的に解析するために、またコストを抑えるためにもKRAS/GNAS遺伝子変異をデジタルPCRでスクリーニングして、変異病変のみを遺伝子パネル解析に進めることとした。パネルも中間解析の結果から、解析遺伝子を吟味して新規パネルを作成した。組織学的に異常を認めない(異型のない)「正常膵管」もこれらのパネル解析が相当な確率で可能なことも明らかになった。現在はこれら解析病変の膵内での分布、病変間の連続性と変異情報の関連を可視化すべく、様々な方法を検討中である。これにより単なる病変間距離ではなく、病変の連続性も加味した変異の広がりが評価可能となる見込みである。この評価にはバーチャルスライドの活用が必要で、その導入と操作手順の標準化を終えた。さらに、上記以外の4切除例について臨床・病理情報の整理を終え、さらにそのうちの1例のマッピングと異型度評価が終了している。
2: おおむね順調に進展している
バーチャルスライドを用いた作業工程の確立に想像以上に時間を要した。そのほかのサンプリングや遺伝子解析自体は予定通りに進行している。ただし、中間解析の結果、コストパフォーマンスの問題からパネルのバージョンアップを要した。病変の地理情報を簡潔に表示する方法の開発が喫緊の課題で、試行錯誤中である。
症例の集積自体は問題ない。遺伝子解析の工程・手技・精度も安定している。これら変異情報と病変の分布に関する情報(地理情報)の効果的な提示方法の開発が重要な課題となる。
多数例での解析を効率よく行うために方法論の詳細をつめる検討が中心になったため、予算が予定よりも少なく経過している。多数例での解析で必要となる繰り越しである。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Frontiers in Oncology
巻: 10 ページ: 1~8
10.3389/fonc.2020.00728
Virchows Archiv
巻: 477 ページ: 21~31
10.1007/s00428-020-02806-8
膵臓
巻: 35 ページ: 302~312