研究実績の概要 |
「浸潤癌が発生しやすいIPMNの特徴を明らかにする」ことを目標に本研究を開始し、指標病変以外の肉眼的な正常膵(背景膵)の解析を進めてきた。これまでに通常型膵癌1例、IPMN由来浸潤癌1例、非浸潤性IPMN1例の切除例に対して、背景膵病変の徹底解析を行った。具体的には上記それぞれ88,41,91病変の形態分類とマッピング、DNA採取と変異解析を行った。中間解析で、背景膵の多数領域を解析することの技術的・人的・資金的問題点が明らかになり、これをクリアするための予備検討として、マイクロダイセクション・パネル解析ではなくゾーン採取・デジタルPCRを試みたが、変異検出感度が全社の60%程度に落ちることが判明し不適切との判断に至った。また少数領域で全エクソン解析(WES)も試みたが、採取検体量やコスト的に多数の微小検体での検討には不適切との判断となった。 以上の経過から方針を転換し、背景膵の多数箇所のパネル解析を行った2例(IPMN由来浸潤癌の一例(Case2)は、背景(BG)膵の萎縮が顕著で解析対象病変が他の2例の半分ほどとなるため除外)から得られたデータで背景膵の特徴をまとめることを本研究の目標とした。背景膵の微小病変の変異解析として既報はあるものの、本研究の如く形態的な正常膵管も含めた多数領域を取り扱った既報はなく、報告の意義はあると考えた。 膵腫瘍そのもののみならずBGも含めた多領域の変異情報を得るために、HG-IPMNと重複PDACをそれぞれIndexとする2例で正常膵管も含む多数部位の変異解析を行い、Indexの大部分とBGの約40%になんらかの変異を認めた。これら変異の大多数はLG fociであった。2例間でサンプル数、異型度、Index/BG間のKRAS変異形式一致率に大きな開きはなかったが、KRAS変異種数には個体差を認めた。この結果を投稿準備中である。
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