研究課題/領域番号 |
20K09080
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井上 重隆 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (00529802)
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研究分担者 |
白羽根 健吾 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10529803)
岩本 千佳 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10752842)
大内田 研宙 九州大学, 大学病院, 講師 (20452708)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 食道癌 / Visium / 空間的トランスクリプトーム / シングルセル解析 / 腫瘍微小環境 |
研究実績の概要 |
癌の浸潤・転移機構に関して、腫瘍微小環境を構成する様々な種類の細胞の相互作用が重要な役割を果たしていることが示唆されており、近年その解明の一助としてシングルセル解析という手法が発展を見せている。今回我々は、“Visium(10X genomics社)”という、スライドガラスにPoly-A補足オリゴがアレイ状に配置され、そこで細胞溶解後mRNAを溶出させることで位置情報を維持したままシングルセルレベルに匹敵する高い解像度での解析を用いることできる新技術に着目した。従来の病理形態学と合致させた遺伝子発現地図を作成し微小環境の解明を行うことを目的として本研究は開始された。 腫瘍先進部では活発な腫瘍免疫応答が行われており、Tリンパ球やBリンパ球といった免疫細胞が多く浸潤していること、また術前化学療法により免疫微小環境は大きく変動することが知られており、まず化学療法の有無での免疫細胞の機能変化を、当研究室がすでに保有している食道癌サンプルで作成されたシークエンスデータを用いたシングルセル解析で評価した。まずBリンパ球に着目すると、術前化学療法の施行に伴ってメモリーBリンパ球の活性化経路の一つであるTNFα経路の関連遺伝子発現が増強していた。また、ナイーブBリンパ球の抑制性受容体の発現も低下しており、術前化学療法によって活性化されやすい環境下に変化している可能性が示唆された。一方、Tリンパ球に関しては、術前化学療法によってアポトーシス関連遺伝子群の発現が低下していた。以上の結果より食道癌における術前化学療法は抗腫瘍免疫に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Visiumは非常に解析範囲が狭いことから、解析部位・化学療法施行の有無を含めた対象症例の選択・解析対象細胞などを検討するために、先行研究として術前化学療法におけるTリンパ球・Bリンパ球の変動解析を行った。 Bリンパ球において、術前化学療法の施行に伴ってメモリーBリンパ球の活性化経路の一つであるTNFα経路の関連遺伝子発現が増強していた。一方、ナイーブBリンパ球の抑制性受容体の発現も低下しており、術前化学療法によって活性化されやすい環境下に変化している可能性が示唆された。一方、Tリンパ球に関しては、術前化学療法によってアポトーシス関連遺伝子群の発現が低下していた。以上の結果より食道癌における術前化学療法は抗腫瘍免疫に関与している可能性が示唆された。 先行研究でのシングルセル解析に時間を要したためやや遅れている進捗状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で得られたTリンパ球・Bリンパ球の免疫細胞の情報を基に、実際に術前化学療法の有無を考慮したサンプルに対し“Visium”を施行し腫瘍先進部の網羅的な遺伝子発現データ解析を行う。 さらにそれらのシークエンスデータをもとに腫瘍の浸潤や転移などに関わる因子を同定された場合には、patient derived organoidやpatient derived xenograftなど作成した上で実証実験を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
先行研究でのシングルセル解析に時間を要し、研究計画に遅れを生じているため。 次年度はシングルセル受託解析費や“Visium”関連試薬に使用する予定である。
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