研究課題/領域番号 |
20K09087
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
尾原 秀明 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (20276265)
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研究分担者 |
松原 由美子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (70365427)
福田 和正 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (50348786)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 再生医療 / 間葉系幹細胞 / 虚血再灌流 / 肝移植 |
研究実績の概要 |
ヒトASCLの技術を応用し、ラット皮下脂肪組織より間葉系幹細胞(Adipose stem cell, ASC)を単離し成熟脂肪細胞へ分化させ、再び脱分化を誘導しASCLの樹立に成功した。ASCLの治療効果を検討するため、肝虚血再灌流モデルラットにそれぞれ生理食塩水、ASC、ASCLを脾臓に投与し3群に分けて比較検討した。結果は、ASCL投与群のラットは生理食塩水とASC群と比較して、AST・ALTの上昇が抑制されていた。肝臓の免疫組織化学染色による病理組織学的検討では、生理食塩水群のラットと比べ、ASC群とASCL群において活性化Caspase-1の発現量が著明に抑制されていた。肝細胞低酸素障害実験では、単離したラット肝細胞をASCもしくはASCLとそれぞれと共培養し、単独培養群と共に1%酸素濃度で3時間の低酸素ストレスを加えた。低酸素障害後、TUNEL染色法によりアポトーシスの評価を行った結果、ASC及びASCL共培養群におけるTUNEL発現量は単独培養群に比べ有意に低発現であった。培養上清中のLDHを測定した結果、同様にASC及びASCL共培養群において有意に低値であり細胞障害が抑制されることが示唆された。また、遺伝子発現解析では単独培養群に比べASC及びASCL共培養群において抗炎症作用を有するTGF-β、IL-10、IL-1RAのmRNA発現の増加が確認された。 以上の結果より、ASC及びASCLは肝臓虚血再灌流損害を抑制する働きを有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
in vitroの実験では、ラット脂肪由来のASCLを樹立することに成功し、またASCとサイトカインなどの発現について比較検討を行った。さらに、当初の計画に加え、単離したラット肝細胞とASCLまたはASCをそれぞれ共培養する実験系を確立し、ASCLがASCと同等あるいはそれ以上のcytoprotective効果を有する可能性を示唆する結果を得た。さらに、2021年度に行う予定であったin vivoの実験にも着手できた。ラットの肝虚血再灌流モデル作成を開始し、安定したin vivoモデルを得ることができた。虚血時間や再灌流後の肝障害程度や各種マーカーの発現のkineticsも検討し、最適なタイムポイントを検証中である。また、ASCLの投与経路も、経門脈投与のみならず、脾臓注入も試み、現在のところ脾臓投与が安定した効果を期待できる結果を得ている。以上より、当初の計画以上のスピード感をもって研究が進んでいると判断した次第である。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoの実験、つまりラットの肝虚血再灌流モデルにおけるASCLの肝保護作用を検討する。肝機能、アポトーシス、各種サイトカインなどの炎症マーカーの発現、さらには生存率もASC投与群と比較検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。
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