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2020 年度 実施状況報告書

TGF-β1を標的とするポリアミドによる肝癌治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K09089
研究機関日本大学

研究代表者

高木 惠子  日本大学, 医学部, 研究医員 (20339328)

研究分担者 緑川 泰  日本大学, 医学部, 准教授 (10292905)
阿部 勇人  日本大学, 医学部, 助手 (10838478)
福田 昇  日本大学, 総合科学研究所, 教授 (40267050)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード肝癌細胞 / TGFβ / PIポリアミド
研究実績の概要

1、ラット肝癌細胞に対する実験
AP1結合サイトを標的配列とし、AP1結合サイトおよびその近傍を様々な形でカバーする8~10塩基認識のポリアミドを複数合成した。ラット肝癌細胞(Fao細胞)にTPA 処理をおこない EMTを誘導し、1nM~1μM の濃度のTGF-β1抑制性PIポリアミド投与し、TGF-βの発現量をreal-time RT PCRを行いPIポリアミドの効果を調べたが、ポリアミドの濃度とTGF-βの発現量の間には有意差が認められなかった。
2、ヒト肝癌細胞に対する実験
ヒトTGF-βプロモーター領域の転写因子結合サイトを認識するPIポリアミドを設計した。ラットの場合と同様、AP1結合サイトを標的配列とし、AP1結合サイトおよびその近傍を様々な形でカバーする8~10塩基認識のポリアミドを複数合成した。
ヒト肝癌細胞株HepG2および HuH-7にTPAを投与し、細胞の形態およびTGF-βの発現量を継時的に調べた。EMTが誘導され、かつ最もTGF-βの発現量が高かった条件を選び、ヒトTGF-β1抑制性PIポリアミドによるTGF-βの発現抑制効果をreal-time PCRにて調べた。また、TGF-β1抑制性PIポリアミド投与群、非投与群の間で細胞増殖能、浸潤能、非足場依存性増殖能などを調べた。PIポリアミド処理は、HepG2およびHLF細胞のTGF-β1mRNAレベルを用量依存的に減少させ、HepG2コロニー形成を阻害した。PIポリアミドは未処理のコントロール細胞と比較してHepG2細胞の増殖を実質的に阻害しなかったが、HLF細胞の浸潤を有意に抑制し、HLEおよびHLF細胞の増殖も抑制し、HLF細胞球体の形成を有意に阻害した。要約すると、TGF-β1抑制性PIポリアミドは肝癌細胞におけるTGF-β1の発現を低下させ、細胞浸潤を抑制した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ラット肝癌細胞に対する実験で、TGF-β1抑制性PIポリアミド投与し、TGF-βの発現量をreal-time RT PCRを行いPIポリアミドの効果を調べたが、PIポリアミドの濃度とTGF-βの発現量の間には有意差が認められなかった。しかし、ヒトTGF-βプロモーター領域の転写因子結合サイトを認識するPIポリアミドを複数設計し、ヒト肝癌細胞に対する実験を行ったところ、そのうちあるPIポリアミドを用いた実験でHepG2およびHLF細胞のTGF-β1mRNAレベルを用量依存的に減少させ、HepG2コロニー形成を阻害した。PIポリアミドは未処理のコントロール細胞と比較してHepG2細胞の増殖を実質的に阻害しなかったが、HLF細胞の浸潤を有意に抑制し、HLEおよびHLF細胞の増殖も抑制し、HLF細胞球体の形成を有意に阻害したことを確認できた。
当初予定としていた細胞実験はおおむね遂行でき、学会発表、論文投稿を行うことができた。

今後の研究の推進方策

動物肝癌モデルを用いたTGF-β1抑制性PIポリアミドの機能検証
(2-1)肝癌を誘発させたラットにTGF-β1抑制性PIポリアミドを投与し、肝癌の発生・進展への影響を検証する。7週齢の雄ラットを下記の3群に分け、それぞれ処理を行う。
1.DEN投与グループ:イソフルラン(2%)吸入による麻酔後、N-ニトロソジエチルアミン(DEN)150 mg/kgを滅菌水に溶解し、週1回、合計3回腹腔内投与を行う。2.DEN+Vehicle投与グループ:DEN 150 mg/kgを週1回、合計3回腹腔内投与を行う。その後、1週毎12週まで溶媒対照(2mg/kg)を尾静脈投与する。3.DEN+PIポリアミド投与グループ:DEN 150 mg/kgを週1回、合計3回腹腔内投与を行う。その後、1週毎12週までPIポリアミド(1mg/kg)を尾静脈投与する。DEN第1回投与日を0日とし、第2回を7日後、第3回を14日後とする。すべてのグループのラットは5頭ずつ第77日、第91日、第105日に炭酸ガスによる安楽死処置を行い血清、肝組織の癌部および非癌部(パラフィンブロック、凍結ブロック)を採取し、癌部・非癌部の切片を作製し、ポリアミド投与の有無により、組織像を検討し、免疫染色で調べる。
(2-2)肝癌を誘発させたラットにTGF-β1抑制性PIポリアミドを投与し、生存率を調べる。
実験(2-1)と同じ3群に分けて15頭ずつ処理を行い、生存解析を行うため第120日まで観察する。第120日まで生存しているものについては、実験(2-1)と同様に安楽死処置を行う。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画より、実験がスムーズに進んだため消耗品の購入が少なくて済んだ、また、新型コロナの影響で学会へ赴くことを控えたため出費がかからなかった。
今後、動物肝癌モデルを用いたTGF-β1抑制性PIポリアミドの機能検証を行う際、予算をまわし、PIポリアミドの合成、動物購入、消耗品購入、パラフィンブロックや凍結ブロック作製などに予算をまわしたいと考えている。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Effects of Pyrrole-Imidazole Polyamides Targeting Human TGF-β1 on the Malignant Phenotypes of Liver Cancer Cells2020

    • 著者名/発表者名
      Takagi Keiko、Midorikawa Yutaka、Takayama Tadatoshi、Abe Hayato、Fujiwara Kyoko、Soma Masayoshi、Nagase Hiroki、Miki Toshio、Fukuda Noboru
    • 雑誌名

      Molecules

      巻: 25 ページ: 2883~2883

    • DOI

      10.3390/molecules25122883

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Pyrrole-imidazole polyamide may be a new drug candidate for treatment of liver cancer2020

    • 著者名/発表者名
      高木恵子、緑川泰、阿部勇人
    • 学会等名
      第56回日本肝癌研究会

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公開日: 2021-12-27  

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