研究課題/領域番号 |
20K09091
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研究機関 | 公益財団法人野口研究所 |
研究代表者 |
井手尾 浩子 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (90180322)
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研究分担者 |
土田 明子 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (70378024)
八須 和子 (広瀬和子) 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (30625447)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ガレクチン / 腹膜播種 / 胃癌 |
研究実績の概要 |
ガレクチン-4を高発現し腹膜播種をおこすNUGC4細胞のWild株、ガレクチン-4ノックアウト(KO)株、KO株にガレクチン-4を再発現させたRes株を使用した動物試験により、ガレクチン-4の発現が腹膜播種に深く関与すること、ガレクチン-4の発現及び腹膜播種能と相関して発現が変化する分子として分子(X)を見出してきた。 近接ライゲーションアッセイ(PLA)によって、分子(X)とガレクチン-4との細胞の膜近傍での近接が明らかになり、分子(X)はガレクチン-4によって制御されている可能性が示唆された。この近接シグナルはガレクチン-4の結合阻害糖鎖の添加で消失し、N結合型糖鎖の合成阻害剤の添加で減少したことから、両者の近接が糖鎖を介していると考えられた。 ガレクチン-4の発現の異なる各株の細胞表面のN結合型糖鎖や糖脂質を分画し、質量分析等の手段で解析を進め、腹膜播種能の高い細胞に特徴的な糖鎖構造を見出すことを試みた。その結果、NUGC4細胞のN結合型糖鎖は殆どシアリル化されておらず、糖脂質に関してはガレクチン-4発現株と非発現株との間で差異が認められた。また糖鎖の合成に関わる転移酵素の発現量の変化をrealtime-PCR法等の方法で解析を行なった。 並行して解析しているMKN45細胞に対するsiRNAによるガレクチン-4の発現抑制でも、KO株と同様に増殖能の低下と分子(X)の低下がみられ、MKN45細胞を使用した動物試験で、siRNA投与による腹膜播種の抑制傾向が認められた。 ビオチン化チラミドを使用して、細胞表面ガレクチン-4近接タンパク質を特異的に標識し解析した結果、分子(X)を含む他の近接タンパク質がビオチン標識され、現在この方法を用いて様々な解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腹膜播種能の高い細胞に特徴的な糖鎖構造を見出すことを目的として、細胞表面の糖タンパク質や糖脂質等を、質量分析等の手段で解析を進めることが出来た。また、ガレクチン-4と分子(X)の近接(相互作用)に糖鎖が関係することを証明することができた。 動物試験においてもRNAiによって、腹膜播種の抑制が見られ、ガレクチン-4発現抑制による腹膜播種抑制の可能性を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
腹膜播種能に関与し、ガレクチン-4発現に相関する近接分子として分子(X)を見出し、両者の近接への糖鎖の関与が示唆されるような結果を得ているが、明確なメカニズム解明までには至っていない。胃癌細胞のガレクチン-4の結合する糖鎖構造(N-, O-glycan, 糖脂質)を同定し、その変化で腹膜播種の制御が可能か調べる。 ガレクチン-4の発現のノックダウン(KD)をsiRNAを使用して行ない、動物試験で腹膜播種を抑制する傾向は認められたことから、ガレクチン-4のリガンド結合能を阻害することで、腹膜播種抑制ができるか、in vitro及びin vivoの系で検証をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が5790円とわずかな為、翌年度の助成金とあわせて試薬等を購入する予定である。
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