ガレクチン-4を高発現し腹膜播種をおこすNUGC4及びMKN45細胞を使用し、ゲノム編集によるガレクチン-4遺伝子ノックアウト(KO)、あるいは特異的RNAiによるノックダウン(KD)によりガレクチン-4の発現を抑制した。その結果、その抑制と相関して増殖能の低下、マウス腹膜播種モデルにおける癌形成能の大きな抑制を見出し、活性化cMET(pMET)、CD44等の低下を認めた。また、胃がん患者の癌組織のパラフィン切片を免疫染色した結果、臨床サンプルにおいても腹膜播種部位でのガレクチン-4の高発現が明らかになった。 近接ライゲーションアッセイによって、pMET、CD44とガレクチン-4との細胞の膜近傍での近接が明らかになり、この近接シグナルはN結合型糖鎖の合成阻害剤の添加で減少したことから、両者の近接が糖鎖を介していると考えられた。細胞表面ガレクチン-4近接タンパク質を特異的に標識し解析した結果でも、活性化cMET(pMET)、CD44を含むいくつかの膜タンパク質がビオチン標識され、その標識はガレクチン-4の結合阻害糖鎖の添加で消失した。 腹膜播種能に関連する胃癌細胞の糖鎖変化を調べる為に、腹膜播種がみられるNUGC4細胞親株、KO株作製時のコントロール株、KO株にガレクチン-4を再発現させたレスキュー株と、腹膜播種がみられないKO株とで質量分析による比較解析を行った。膜蛋白質のN結合型糖鎖に関しては両者で大きな差が認められなかったが、中性糖脂質の組成に大きな差異が認められた。Realtime-PCR法等で解析を行なった結果、腹膜播種能と関連して差異が認められる糖脂質糖鎖の合成に関わる転移酵素の発現に大きな変化が見られ、この転移酵素に関してさらなる解析を行っている。
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