研究課題
術前に化学療法を投与し、指摘時期を見計らい、絶妙なタイミングで手術を遂行することは、患者のQOLを左右する。大腸癌の術前化学療法による腫瘍縮小は、腫瘍完全切除の大きな手助けとなるだけではなく、機能維持(肛門機能・排尿機能・生殖機能)に寄与する。今年度は、大腸癌の浸潤・進展の解析にあたり、大腸癌の立体的・空間的構造を理解するために、組織透明化(tissue clearing)の手法を用いて、サイトケラチン(腫瘍)とCD34(血管)による蛍光二重染色を用いて、三次元構造を詳細に観察した。大腸癌の組織型は、高分化型管状腺癌や中分化型管状腺癌を示す場合が多いが、通常の病理診断で用いられるヘマトキシリン・エオジン染色法による組織標本では、それらを二次元でしか観察することができない。しかし、組織透明化法では、腫瘍の構造を立体的に捉えることができ、どのように血管侵襲を示していくのかを、三次元的に連続性をもって解析することが可能である。腫瘍細胞と血管の関係における立体的観察解析では、非腫瘍性大腸組織と化学療法を施行していない大腸組織組織を詳細に観察している。今後さらに、化学療法施行症例においても、腫瘍細胞と血管の関係を三次元観察して、その腫瘍細胞の空間的構造の違いや血管の分布の特徴・違いについて解析する。また、抗体の組織浸透性を工夫して、より広い範囲を三次元で観察できるように努めていく。
3: やや遅れている
大腸癌の組織透明化(tissue clearing)を施行し、その立体構造を理解すべく努力している。今年度は、標本作製の段階で腫瘍組織への抗体の浸透に難渋し、研究実績が十分にえられていないのが現状である。一方で、今年度後半には、組織透明化の標本作製に改善がみられ、今後の立体構造解析に期待が持てるようになってきた。
大腸癌の組織透明化(tissue clearing)を継続し、非腫瘍性の大腸組織・大腸癌組織・化学療法後の大腸癌組織の立体構造の理解に務め、臨床的な治療効果判定、組織学的治療効果判定とともに、組織透明化によって得られた組織型、血管分布との比較検討を行う予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 1-12
10.1038/s41598-021-00727-3
Oncology Letters
巻: 21 ページ: 276
10.3892/ol.2021.12537