直腸癌の術前化学療法 (NAC: neoadjuvant chemotherapy) において、時計遺伝子機能と放射線画像情報を統合した独創的な治療効果予測法の開発と確率および治療薬への応用を目指すという、目標を掲げ、研究に取り組んだ。 直腸癌の再発因子として、MRI画像検査で確認される直腸癌壁外病変 (Extramural vascular invasion・Tumor deposit) の存在が再発因子として明らかになっている。そこで、直腸癌NAC後に壁外病変が残存する直腸癌、NAC抵抗性直腸癌の生物学的特徴を明らかにするために、NAC後壁外病変消失群(NAC奏効群)とNAC後壁外病変残存群(NAC抵抗群)に分類し、両症例の外科切除組織標本を用いて、プロテオーム解析を行った。2群間の発現タンパク質を確認、パスウェイ解析を施行した結果、NAC抵抗群に特異的な発現変動がみられたタンパク質は、Sulfur metabolism pathwayと高い関連性を示した。そのうち関連タンパク質である、Selenium binding protein 1(SELENBP1)に着目し、免疫組織学的検討を行ったところ、NAC後切除標本におけるSELENBP1の発現低下がNAC治療組織学的治療効果の低さと相関してた。本結果は、SLENBP1の免疫染色がNAC抵抗性の指標として診断に応用可能であることが示唆された。
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