研究課題
(内容)胃癌のなかでも予後が不良であるスキルス胃癌は包括的大規模ゲノム解析においては遺伝子変異の限定的なゲノム安定型(GS:genomically stable)に分類され、現在でも有効な分子標的治療薬の開発が実現していない。そこで、がん細胞表面、細胞膜の最外層に存在する糖鎖に着目し、スキルス胃癌細胞に特異的な糖鎖発現プロファイルを明らかにし、その糖鎖を標的とした新規治療法の可能性を探索した。96種類の糖鎖結合レクチンを用いた網羅的解析により11種類のスキルス胃癌に高親和性を示すレクチンと、8種類の低親和性レクチンを同定した。高親和性レクチンはそれぞれ異なる糖鎖に結合するものであったが、低親和性レクチンのうち5種類は同じ糖鎖(α2-6シアリル化糖鎖)と結合することが判明し、スキルス胃癌細胞の特性、悪性度との関連性が示唆された。またスキルス胃癌細胞に高親和性のレクチンのうちrBC2LCNレクチンはin vivoにも投与が可能で、薬剤との複合体によりスキルス胃癌細胞移植マウスモデルにおいて抗腫瘍効果を示すことを明らかとし、スキルス胃癌に対する糖鎖標的薬物療法の可能性を示すことができた。(意義)スキルス胃癌に対して有効な薬剤が未だない状況においてゲノム変異や分子標的とは異なるアプローチである糖鎖標的治療が臨床応用できる可能性を示すことができた。先行研究において膵癌に対して開発しているレクチン薬物複合体が臨床応用可能となれば、スキルス胃癌に対しても新たな治療オプションとなり得る。
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Gastric Cancer
巻: 25 ページ: 896~905
10.1007/s10120-022-01312-x