研究実績の概要 |
閉塞性黄疸に伴う胆汁鬱滞など、腸肝循環に劇的な変化をもたらす病態では、腸内細菌叢にもバランスの乱れが起こり、肝再生能力も障害されている可能性が極めて高いと考えられるが、その機序は不明である。そこで、閉塞性黄疸では腸内細菌叢の乱れが生じ,肝再生が阻害されるのではないか、また腸内細菌移植・シンバイオティクスなどの腸内環境回復治療により肝再生能力が改善するのではないか、という作業仮説をたて、令和4年から5年度において以下の実験系を行った。 【実験1-C】先に作成し、タイムポイントを設定した胆汁鬱滞ラットモデル、コントロールモデルに対して肝切除を付加し、48時間後(術後2日)における残肝重量の比較を行い、胆汁鬱滞モデルでの残肝重量増大の低下を認めた。また、術後2日目ならびに術後4日において、血清Alb値、AST値, ALT値, T-bil値を確認、胆管結紮モデルで明らかに黄疸と肝障害が生じていることを確認した。 【実験2-A】胆汁鬱滞ラットモデル、ならびにコントロールモデルにおける糞便中腸内細菌DNA検出と16SrRNA遺伝子増幅:作製した胆汁鬱滞ラットモデルから採取した糞便より腸内細菌DNAを抽出し、DNA中に含まれる真正最近由来16SrRNA遺伝子をPCR法により増幅し、微生物群集構造解析用のサンプルを作製した。【実験2-B】採取したサンプルを用いて細菌叢組成解析(メタ16S rRNA解析)を行い、術当日から術後4日目にかけての両群におけるα多様性、β多様性を検証した。実際の胆汁鬱滞モデルにおける4日目サンプルでα多様性に有意差を認めたが、その他に有意な所見は認めなかった。また、胆汁鬱滞ラットモデル、ならびにコントロールモデルに対して肝切除を付加したモデルの術当日から術後4日目におけるサンプルを採取し同様に細菌叢組成解析を行ったが、有意な組成の相違は確認されなかった。
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