研究課題
白金製剤を用いた化学療法および化学放射線療法は切除不能進行・再発食道癌の治療において標準治療のひとつであるが、完全奏効割合15%、2年生存割合32%と未だ満足できる成績ではない。白金製剤や放射線治療はがん細胞のDNA2本鎖切断によりアポトーシスを誘導して殺細胞性効果を発揮するが、Rad51はDNA損傷断端の1本鎖に結合して姉妹染色体の相同部位へ誘導することでDNA2本鎖切断を修復し(相互組換え修復)、化学放射線療法への抵抗性獲得に貢献している。本研究では食道扁平上皮癌の化学放射線療法感受性に関わる相互組換え修復機構に影響を及ぼすE2F1-Rad51経路の意義を明らかにし、これを標的とした新しい分子標的治療との併用による、化学放射線療法感受性の向上を目的とした画期的な新規治療法の開発を目指す。Rad51蛋白を高発現している食道扁平上皮細胞株KYSE150に対して、Rad51に対するsiRNAをtransfectionしてRad51発現を抑制したところ、シスプラチンの感受性が向上した。Rad51蛋白を過剰発現している食道扁平上皮癌症例では、白金製剤や放射線治療によるDNA2本鎖切断に対して相同組換え修復が活性化しており、治療抵抗性を獲得していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究は計画通りに遂行でき、次年度以降にその成果を欧文誌への投稿・学会発表をおこなうよう準備する。
食道扁平上皮癌由来の癌細胞株において、Rad51発現レベルを含む組換え修復機構に関連する因子の発現プロファイルとシスプラチンおよび放射線治療の感受性・抵抗性との関連を明らかにする。
次年度以降に研究、学会・論文発表などに費用がかかるため、来年度の研究費とすることにした。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)
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