研究課題/領域番号 |
20K09106
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三好 圭 九州大学, 大学病院, 助教 (70755272)
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研究分担者 |
進藤 幸治 九州大学, 大学病院, 助教 (00788432)
水元 一博 九州大学, 大学病院, 准教授 (90253418)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵癌 / シングルセル発現解析 / オルガノイド / 膵星細胞 / 癌微小環境 / 微小環境因子 / 膵癌subtype |
研究実績の概要 |
膵癌は他の癌腫に比べ化学療法や放射線の効果が乏しく、新たな治療法の開発が切望されてきたが、依然として十分ではない。本研究では、膵癌オルガノイドおよび膵星細胞を用いた3D共培養モデルとシングルセル発現解析を併用することで、膵癌の増殖・浸潤に強く影響する特定の膵星細胞集団を同定し、それらを制御する個別の治療法を確立することを目的とする。 本年度は、ヒト由来膵癌切除組織から膵癌オルガノイドおよび膵星細胞の同時樹立を複数例行った。樹立した膵癌オルガノイドの微小環境因子への依存性を評価し、膵星細胞との共培養下でのみ増殖する膵星細胞依存性膵癌オルガノイドを同定できた。また、それら樹立組織と異なる切除組織ではあるが、ヒト膵癌組織のシングルセル発現解析を行った。クラスタリングを行い、線維芽細胞集団を同定し解析を進めたが、採取できた線維芽細胞数が少なく、線維芽細胞集団からさらなるクラスタリングが困難であり、膵星細胞依存性膵癌を支持する活性化膵星細胞集団はできなかった。しかし、樹立した膵癌オルガノイドのうち、膵星細胞への依存性が高いオルガノイドにおいて特に依存性が高い微小環境因子を同定することで、活性化膵星細胞が分泌していると予測される分泌性タンパクを選出できた。これら分泌性タンパクへの依存性は膵癌オルガノイドごとに異なっており、またこれらタンパクは新たな治療標的となり得ることから、これら結果を国際学会および国内学会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画に沿って、膵癌切除組織から多数の膵癌オルガノイドおよび膵星細胞を樹立できた。また、これらの共培養モデルを用いて、膵星細胞への依存性の高い膵癌オルガノイドを同定でき、これら依存性に基づいた分類が可能であった点は当初の計画通りである。シングルセル発現解析においても単症例ではあるが実施できた。しかし、オルガノイド樹立検体とは異なる検体であり、採取できた線維芽細胞数が少なく解析が不十分であった点が予定していた実験計画と異なる点である。そこで、各膵癌オルガノイドの微小環境因子への依存性をそれぞれ評価することで、シングルセル発現解析で行う予定であった活性化膵星細胞由来液性因子の候補選出ができたため、おおむね順調な進捗状況と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
シングルセル発現解析が実施できたのは単症例のみであり、間質成分に富む硬い膵癌組織を十分に単細胞化する点において難渋したことが、今回の解析ターゲットである膵癌組織中の線維芽細胞集団を十分に解析できず当初の計画に沿えなかった原因である。しかし、膵癌オルガノイド培養時に添加する微小環境因子への依存性を各膵癌オルガノイドにおいて評価し、その依存性と膵星細胞に対する依存性を照合することで、膵星細胞が分泌し膵癌細胞の増殖に寄与し得る液性因子の候補を挙げることが可能であった。今後、シングルセル発現解析による活性化膵星細胞集団の解析に難渋すれば、これら候補因子を標的とし、先の研究計画を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。 次年度は研究用試薬、器材、シングルセル受託解析費用等に使用する予定である。
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