研究課題
臨床データを使った解析では、当院で様々な癌種毎に解析していたミスマッチ修復タンパク発現結果の統合解析を行った。大腸癌、胃癌、小腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、皮脂腺腫瘍、計3607例に対してマイクロサテライト不安定性の原因となるミスマッチ修復タンパク(MLH1,MSH2, MSH6,PMS2)の免疫染色検査結果を解析した。その結果、ミスマッチ修復タンパクの欠失が癌腫によって異なることを確認した。ミスマッチ修復タンパクが正常発現の癌は大腸癌の95.1%、胃癌の88.7%、小腸癌の93.3%、子宮内膜癌の82.8%、卵巣癌の99.0%、腎盂尿管癌の97.6%、膀胱癌の98.5%、前立腺癌の98.8%、皮脂腺腫瘍の61.5%であった。全9癌種では94.1%が正常のミスマッチ修復タンパク発現であった。皮脂腺腫瘍を除く、悪性腫瘍では癌種により異なったが、1.0%~17.2%がミスマッチ修復タンパク異常である。ミスマッチ修復タンパク異常またはマイクロサテライト不安定性癌に対する免疫チェックポイント阻害薬が有効であるが、その頻度は限られている。がんの発生にはマイクロサテライト不安定性以外に多くの遺伝子修復機構の異常が報告されている。例えばDNA相当組み換え修復などに関与するBRCA1/2遺伝子の病的バリアントによる不活化に対するPARP阻害薬は、2つのDNA修復経路の両方が傷害されることによる合成致死性を示し、がん治療に応用されている。他の遺伝子修復機構の破綻を治療に応用できないか。本研究ではそのような新規の合成致死療法の探索を試みている。
4: 遅れている
上記臨床データを用いた研究と平行して、細胞株を使用した実験を行う予定であったが、クリーンベンチの故障、新型コロナウイルス感染症流行に伴う、冷凍庫関連の実験に必要な物品の不足が生じて、細胞株培養が中断した。
様々な固形癌のおよそ94%を占めたミスマッチ修復タンパクが正常発現の癌にたいし、BRCA遺伝子バリアントによるBRCA不活化に対するPARP阻害薬のように、合成致死を利用した治療の基となる現象を探索するため、遺伝子修復機構の1つであるMGMT遺伝子に着目して細胞株による研究を行う予定である。
一部の試薬を予定よりも安価で購入できたため。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
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