研究課題
臨床データを使った解析では、当院で様々ながん種毎に解析し発表されていたミスマッチ修復タンパク発現結果の統合解析を行った。大腸癌、胃癌、小腸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、皮脂腺腫瘍、計3607例に対してマイクロサテライト不安定性の原因となるミスマッチ修復タンパク(MLH1,MSH2, MSH6,PMS2)の免疫染色検査結果を解析した。ミスマッチ修復タンパク異常またはマイクロサテライト不安定性癌に対する免疫チェックポイント阻害薬が有効であるが、その頻度は限られている。がんの発生にはMLH1,MSH2, MSH6,PMS2以外にも様々な遺伝子修復機構の異常が報告されている。例えばDNA相当組み換え修復などに関与するBRCA1/2遺伝子の病的バリアントによる不活化に対するPARP阻害薬は、2つのDNA修復経路の両方が障害されることによる合成致死性を示し、がん治療に応用されている。他の遺伝子修復機構の破綻を治療に応用できないか。本研究ではそのような新規の合成致死療法の探索を試みている。大腸癌細胞株RKOはMLH1のプロモーターのHypermethylationによりMLH1の発現が抑制され、遺伝子修復機構の異常の1つであるマイクロサテライト不安定性を示す。この大腸癌細胞株において、もう一つの遺伝子修復に関与する蛋白質の1つであるBLMを抑制による細胞増殖の変化を評価するために、RKOにおけるBLMの発現をウエスタン・ブロットで確認した。
4: 遅れている
上記臨床データを用いた研究と平行して、細胞株を使用した実験を行う予定であったが、クリーンベンチの故障が生じて、細胞株培養実験が中断した。
RKOにおけるBLMの発現をウエスタン・ブロットで確認した。今後再現性の確認のために別の抗BLM抗体も用いて評価予定である。また、遺伝子修復機構の1つであるMGMT遺伝子を不活化させることでの変化も評価予定である。また、大腸癌の臨床検体を用いてBLMやMGMTの発現と予後の関連を評価する。RKOはマイクロサテライト不安定性を示す細胞株であるが、マイクロサテライト不安定性を示さない細胞株においても複数の修復機構を阻害することが治療薬につながる可能性について研究する。
一部の物品が予測より安価に購入できたため。また、一部の使用期限のある試薬は実験の進捗状況に合わせ、無駄にならないように、2022年度の購入とした。
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