研究課題
合成致死性とは、1つの遺伝子変異では腫瘍細胞死を示さず、2つ以上の経路が同時に欠損/阻害されることにより、細胞死が起きる現象を指し、PARP阻害剤がBRCA遺伝子変異陽性の卵巣癌に承認されて以来注目されている。Microsatellite instability(MSI)癌に対しては、合成致死性を誘導する候補因子としてRecQ DNAヘリカーゼ WRNが報告された。すなわち、DNA修復酵素と2本鎖状態維持機能を伴う酵素との組み合わせが合成致死性の誘導に最適である可能性が示唆される。我々は、non-MSI癌にその欠失が認められ、MSI癌と関連性を認めない、その他のDNA修復酵素として、MGMTに着目し、殺細胞剤とPARPまたはRecQ DNAヘリカーゼ群(WRN、BLM)を阻害することでnon-MSI癌に合成致死性を誘導できないかどうかを検証し、臨床応用への橋渡しを試みる。大腸癌細胞株RKO(BRAF変異、MSI、MGMT非メチル化)では、ウエスタン・ブロットでBLMの発現が確認された。また、HT29(BRAF変異、non-MSI、MGMT非メチル化)ではBLMの発現を認めなかった。今後、HT29におけるMGMTの発現抑制、RKOにおけるBLM(+MGMT)の発現抑制後の変化を観察する予定である。WRNまたはMGMTのみにメチル化を認める症例は、MGMTやWRNを不活性化することで、潜在的合成致死性を獲得する可能性を有している。The Cancer Genome Atlas ProjectのColon and Rectal Cancerデータを用いた解析では、WRNのみ、MGMTのみにメチル化を認める症例は各々15.4%、24.5%であり、約40%が潜在的合成致死性を獲得する可能性があることが示唆された。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (11件)
Scientific Reports
巻: 13 ページ: 2078
10.1038/s41598-023-29397-z
Journal of Crohn's and Colitis
巻: 17 ページ: 754~766
10.1093/ecco-jcc/jjac186
Oncology
巻: 101 ページ: 105~116
10.1159/000527098
消化器外科
巻: 46 ページ: 189~199
巻: 12 ページ: 135~140
10.1038/s41598-022-17773-0
日本臨床
巻: 80 ページ: 218~224