研究課題
癌死亡の90%は転移に起因しているが、転移のメカニズムは未だ明らかでない。大腸癌の転移再発は、原発巣の外科的な切除後2年以内に生じることが多い。このことから申請者は、原発巣は何らかの転移抑制シグナルを産生し転移巣の増殖を制御しているが、原発巣の切除によりその抑制シグナルが消失することで転移の発症が促進される可能性を想像している。また、高転移性癌では、癌間質の主な構成細胞である線維芽細胞(carcinoma-associated fibroblasts: CAFs) がこの原発巣由来の転移抑制シグナルを阻害することにより、結果として転移を促進していることが予測される。申請者は、患者大腸癌を模倣した patient-derived xenograft (PDX)モデルを樹立し、単一癌細胞よりも上皮系/間葉系の性質を有した癌細胞集団がより顕著に転移を形成することを明らかにした実績がある。申請研究では、大腸癌PDXモデルを使用し、原発巣由来の転移抑制シグナルを同定し、CAFsによる転移抑制シグナルの阻害機構を解明しさらに前臨床マウスモデルを使用した新規転移抑制治療の基礎を確立することを目標とする。手術により切除された患者大腸癌組織をNOG免疫不全マウスに同所移植しPDXを作製した。PDXより癌オルガノイド培養を樹立した。現在まで8例のオルガノイドの樹立に成功している。部分的な上皮間葉移行を呈するオルガノイドや呈さない完全に上皮系のオルガノイドが樹立された。13例のオルガノイドが樹立されたが4例は凍結状態より回復が困難な結果となり、PDXのstockをマウスに移植後に癌塊より再度オルガノイドを抽出予定である。この内1例のオルガノイドは同所移植後に肝臓や肺に自発転移することがわかっているが、再度転移能の評価が必要である。
2: おおむね順調に進展している
手術により切除された患者大腸癌組織をNOG免疫不全マウスに同所移植しPDXを作製した。PDXより癌オルガノイド培養を樹立した。現在まで8例のオルガノイドの樹立に成功している。部分的な上皮間葉移行を呈するオルガノイドや呈さない完全に上皮系のオルガノイドが樹立された。
13例のオルガノイドが樹立されたが4例は凍結状態より回復が困難な結果となり、PDXのstockをマウスに移植後に癌塊より再度オルガノイドを抽出予定である。この内1例のオルガノイドは同所移植後に肝臓や肺に自発転移することがわかっているが、再度転移能の評価が必要である。
新型コロナウイルス感染の影響でがん細胞を高度免疫不全NOGマウスに移植する予定されていた実験が一部延期になったため
すべて 2020
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Int J Cancer
巻: 146 ページ: 2547-2562
10.1002/ijc.32672.