研究課題/領域番号 |
20K09111
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小島 豊 順天堂大学, 医学部, 客員准教授 (00327800)
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研究分担者 |
折茂 彰 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (70275866)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大腸癌オルガノイド / CAFs / 原発巣 / 転移抑制シグナル |
研究実績の概要 |
癌死亡の90%は転移に起因しているが、転移のメカニズムは未だ明らかでない。大腸癌の転移再発は、原発巣の外科的な切除後2年以内に生じることが多い。このことから申請者は、原発巣は何らかの転移抑制シグナルを産生し転移巣の増殖を制御しているが、原発巣の切除によりその抑制シグナルが消失することで転移の発症が促進される可能性を想像している。また、高転移性癌では、癌間質の主な構成細胞である線維芽細胞(carcinoma-associated fibroblasts: CAFs) がこの原発巣由来の転移抑制シグナルを阻害することにより、結果として転移を促進していることが予測される。申請者は、患者大腸癌を模倣した patient-derived xenograft (PDX)モデルを樹立し、単一癌細胞よりも上皮系/間葉系の性質を有した癌細胞集団がより顕著に転移を形成することを明らかにした実績がある (Mizukoshi K., et al., International Journal of Cancer, 2019, In press)。申請研究では、大腸癌PDXモデルを使用し、原発巣由来の転移抑制シグナルを同定し、CAFsによる転移抑制シグナルの阻害機構を解明しさらに前臨床マウスモデルを使用した新規転移抑制治療の基礎を確立することを目標とする。 『大腸癌の転移・再発は、なぜ原発巣の外科的な切除後に多発するのか?』の問いを明らかにするため、17例の手術により摘出された大腸癌部および非癌部の検体を採取した。これらの検体を酵素処理後、primary cultureし16例でCAFsおよびコントロールの線維芽細胞のペーアーでの樹立に成功した。また、がん組織の一部を酵素処理し10症例の大腸癌オルガノイドも樹立した。本年度の研究実績として、研究に必要な臨床サンプルからの線維芽細胞とヒト大腸癌オルガノイドの樹立に成功したことがあげられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
17例の手術により摘出された大腸癌部および非癌部の検体を採取した。これらの検体を酵素処理後、primary cultureし16例でCAFsおよびコントロールの線維芽細胞のペーアーでの樹立に成功した。また、がん組織の一部を酵素処理後primary cultureし、10例の大腸癌オルガノイドを樹立した。研究に必要な臨床サンプルからの線維芽細胞と大腸癌オルガノイドの樹立に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
16例のヒト大腸癌由来CAFsおよびコントロールの線維芽細胞の樹立に成功した。 CAFsおよびコントロールの線維芽細胞のトラスクリプトーム解析を施行し、治療抵抗性に寄与する分子の同定を今後は試みたい。 大腸癌PDXやオルガノイドに関しては実験プロトコルを改良し樹立効率を改善する必要がある。術後の検体をマウスに移植することなくダイレクトにオルガノイドを培養する系も現在構築中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体より採取した線維芽細胞や癌オルガノイドの増殖が予想より遅く予定していた解析が次年度に延期されたため。
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