研究課題/領域番号 |
20K09114
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
衣笠 哲史 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 教授 (90279266)
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研究分担者 |
溝口 恵美子 久留米大学, 医学部, 教授 (40782157)
角田 俊之 福岡大学, 医学部, 准教授 (70444817)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / CAC / claudin-2 / CEACAM6 / CHI3L1 |
研究実績の概要 |
sporadic大腸癌患者の切除標本から①正常大腸粘膜組織、②大腸癌組織、癌合併潰瘍性大腸炎(以下CAC)患者の切除標本から③肉眼的な正常粘膜組織、④炎症部位組織、⑤癌組織 など手術標本を用いてcDNAマイクロアレイ解析を行った。(久留米大学倫理委員会承認番号:09315) 上記、③と比較して⑤にて発現が増強しているが、①にくらべ②で発現が増強していない物質を検討したところ、Claudin 2、Carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule 6 (CEACAM6)、Chitinase 3-like 1 (CHI3L1) などが抽出された。上記⑤の組織における免疫染色でClaudin2、CEACAM6、CHI3L1が同じ部位に発現していることを確認した。 CEACAM6は、Adherent Invasive E. coli (AIEC)のreceptorで、クローン病(CD)患者の炎症悪化に関与しているとの報告があり、UCの炎症悪化にも関与している可能性が示唆される。この関与を確認するために、CAC患者の切除標本・癌組織においてCEACAM6およびAIECが産生可能なLipopolysaccharide(LPS)が同じ部位に発現しているかを免疫染色にて確認したとろ、同じ部位に発現をみとめた。 Claudin 2は正常大腸粘膜のtight junction に存在するが、sporadic大腸癌組織ではその異所性発現が増加している報告があり、今回、UCのCAC組織にも同様の所見が確認された。Claudin 2の発現はMAPKにて調整されているが、CHI3L1は、腸管上皮のvitroの系でIL-13Rα2を介してMAPK/Erk、Akt/PKBおよびWnt/β-cateninなどのシグナル伝達を活性化することからClaudin 2の異所性発現に関連している可能性がある。CEA関連抗原であるCEACAM6は好中球などに発現し、胃癌や大腸癌でその発現は増減している報告があり、腸管の炎症に関わっていると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
sporadic大腸癌患者の切除標本およびCAC患者の切除標本を用いてcDNAマイクロアレイ解析による遺伝子発現の結果をふまえて、組織でのタンパク質の発現を確認できた。これらの分子はCDの炎症悪化に関与するAIECに関連していることも判明し、UCにおける炎症の増悪が癌化に関与している可能性が示唆された。現在、同じ標本を用いてRNAシークエンスを行っており、この結果とCDNAマイクロアレイの解析データとを照合して今後の実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今までの検討から、Claudin 2、CEACAM6およびCHI3L1 などCACに関与している可能性が示唆される分子が抽出された。しかし、これらの分子はsporadic大腸癌でも発現を認めることもあり、CAC特異的な分子としては説得力が乏しい。現在行っているRNAシークエンスの結果とcDNAマイクロアレイの解析データももう一度解析し、よりCACに特異的な分子を抽出していきたい。また、その抽出された分子に関して切除標本でタンパク質の発現を確認していく予定である。その後、これらの分子がどのような機序で増加するのかシグナル伝達系を含めて検討していく予定である。また、CDの病態に関与しているAIECがCAC患者にも認められた意義を検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前倒し支払い請求額を500,000円行った。これは、RNAシークエンスの解析委託と前述のように免疫染色を行うために抽出された分子のタンパク質の発現を確認するためであったが、その分子の候補が10種類であったため、それらの抗体購入において今年度の使用額を超える恐れがあったためである。
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