• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

PDXモデルの多層プロテオーム解析による大腸癌転移制御法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K09116
研究機関愛知県がんセンター(研究所)

研究代表者

木下 敬史  愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 研究員 (40467311)

研究分担者 細田 和貴  愛知県がんセンター(研究所), がん情報・対策研究分野, 研究員 (00728412)
田口 歩  愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 分野長 (50817567)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード大腸癌 / 肝転移 / 腹膜播種 / PDXモデル / プロテオミクス / 細胞表面タンパク質
研究実績の概要

大腸癌の生存率向上のためには、再発・転移巣の制御が極めて重要である。次世代シーケンシングなどの解析手法の進歩によって、ゲノム情報を中心に転移性大腸癌の分子生物学的な知見は集積しつつあるものの、有効な治療法の開発には至っていない。そこで、本研究では、プロテオミクスを用いた革新的なアプローチによって、転移性大腸癌の克服に取り組む。細胞表面タンパク質は、癌において機能的に重要な役割を果たしているだけでなく、その局在から、直接的な治療標的としても非常に有望である。細胞表面タンパク質は細胞内タンパク質に比べて極めて微量であることから、本研究では転移性大腸癌患者から採取された臨床検体を用いて患者腫瘍組織移植(patient-derived xenograft; PDX)モデルを作成し、PDX腫瘍を用いて細胞表面タンパク質(サーフェスオーム)解析を行う。現在までに、大腸癌原発巣39例、肝転移巣15例からのPDXモデルを作成した。原発巣、肝転移巣各12症例(うちペア4症例)から得られたPDX腫瘍について、サーフェスオーム解析、リン酸化プロテオーム解析、RNAシーケンス解析が完了し、データ解析を進めている。また、並行して進めていた、in vivo selectionにより樹立した高転移性マウスCT26大腸癌細胞株の解析から、腹膜播種に関連する分子を同定した。今後は、PDX腫瘍の多層オミクス解析を完了し、肝転移に重要な新規治療標的分子を探索同定すると共に、腹膜播種関連分子のさらなる機能解析を進める。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までに、大腸癌原発巣39例、肝転移巣15例からの患者腫瘍組織移植(PDX)モデルを作成した。このうち5症例においては、原発巣と肝転移巣のペアとして作成できた。また、大腸癌原発巣11例、肝転移巣9例から患者腫瘍由来細胞株(PDC)を樹立した。原発巣、肝転移巣各12症例(うちペア4症例)から得られたPDX腫瘍について、サーフェスオーム解析、リン酸化プロテオーム解析、RNAシーケンス解析が完了し、現在データ解析を進めている。また、マウスCT26大腸癌細胞株を用いたin vivo selectionにより、肝転移、リンパ節転移、腹膜播種をそれぞれ高頻度に起こす亜株と、転移を起こしにくい亜株をそれぞれ樹立した。低転移性亜株に比べ、各高転移性亜株では高い遊走・浸潤能を獲得していた。各亜株において、RNAシーケンス解析と多層プロテオーム解析を行い、分子プロファイルを比較したところ、特に転移関連分子Aが、腹膜播種亜株で高発現していることを見出した。腹膜播種亜株において、siRNAを用いた分子Aのノックダウンにより、細胞の遊走浸潤能が著名に低下し、分子Aが大腸癌腹膜播種において重要な役割を果していることが示唆された。

今後の研究の推進方策

PDXモデルの作成を継続するとともに、オミクス解析を行ったPDX腫瘍についてエクソーム解析を行い、多層オミクス解析を完了する。原発巣と肝転移巣PDX腫瘍の多層オミクスプロファイルを比較し、肝転移形成にかかわる新規治療標的分子を同定する。腹膜播種に関連する分子Aについては、その発現誘導や下流シグナルにかかわる分子メカニズムを明らかにする。また免疫組織学的染色を行って腹膜播種の予測マーカーとしての有効性を検討する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍により、プロテオーム解析計画にずれが生じたため、次年度使用額が生じた。解析計画を修正し、今年度使用する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [国際共同研究] MD Anderson Cancer Center(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      MD Anderson Cancer Center
  • [雑誌論文] Identification of Blood-Based Biomarkers for the Prediction of the Response to Neoadjuvant Chemoradiation in Rectal Cancer2021

    • 著者名/発表者名
      Dayde D, Gunther J, Hirayama Y, Weksberg DC, Boutin A, Parhy G, Aguilar-Bonavides C, Wang H, Katayama H, Abe Y, Do KA, Hara K, Kinoshita T, Komori K, Shimizu Y, Tajika M, Niwa Y, Wang YA, DePinho R, Hanash S, Krishnan S, Taguchi A.
    • 雑誌名

      Cancers

      巻: 13 ページ: 3642

    • DOI

      10.3390/cancers13143642

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Physician scientistを志して   ~新しい外科の地平線を切り拓くために~2022

    • 著者名/発表者名
      森 治樹、阿部雄一、梶野泰祐、夏目誠治、木下敬史、大内 晶、三宅 亨、飯田洋也、水野和幸、細田和貴、小森康司、清水泰博、谷 眞至、田口 歩
    • 学会等名
      第122回日本外科学会定期学術集会
  • [学会発表] In vitro転移モデルのマルチオミクス解析による大腸癌転移機構の解明と制御法の開発2021

    • 著者名/発表者名
      森 治樹、阿部雄一、夏目誠治、木下敬史、大内 晶、三宅 亨、飯田洋也、細田和貴、小森康司、清水泰博、谷 眞至、田口 歩
    • 学会等名
      第59回日本癌治療学会学術集会
  • [学会発表] Establishment and multi-omic characterization of mouse colorectal cancer cell lines with different metastatic potentials2021

    • 著者名/発表者名
      Haruki Mori, Yuichi Abe, Taisuke Kajino, Toru Miyake, Masaji Tani, Ayumu Taguchi
    • 学会等名
      第80回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] In vitro大腸癌転移モデルの多層オミクス解析に基づく転移分子機構解明とその制御法の開発2021

    • 著者名/発表者名
      森 治樹、阿部雄一、夏目誠治、大内 晶、木下敬史、三宅 亨、飯田洋也、細田和貴、小森康司、清水泰博、谷 眞至、田口 歩
    • 学会等名
      第29回日本消化器関連学会週間

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi