研究課題
大腸癌の生存率向上のためには、再発・転移巣の制御が極めて重要である。次世代シーケンシングなどの解析手法の進歩によって、ゲノム情報を中心に転移性大腸癌の分子生物学的な知見は集積しつつあるものの、有効な治療法の開発には至っていない。本研究では、大腸癌原発巣、転移巣からそれぞれ患者腫瘍組織移植(patient-derived xenograft; PDX)モデルを作成し多層オミクス解析を行うことで、転移性大腸癌の制御法開発を目指した。現在までに、大腸癌原発巣66例、肝転移巣26例からPDXモデルを作成した。このうち5症例においては、原発巣と肝転移巣のペアとして作成できた。さらに32症例において患者腫瘍由来細胞株(Patient-derived cells; PDC)を樹立した。原発巣、肝転移巣各16症例(ペア5症例を含む)から得られたPDX腫瘍について、エクソーム解析、RNAシーケンス解析、サーフェスオーム解析、リン酸化プロテオーム解析が完了し、データ解析を進めている。また、マウスCT26大腸癌細胞株を用いて、in vivo selectionにより腹膜転移を高頻度に起こす亜株と転移を起こしにくい亜株を樹立した。高腹膜転移亜株は低転移性亜株に比べて高い遊走・浸潤能を獲得していた。各亜株のRNAシーケンス解析とプロテオーム解析から、分子Xが高腹膜転移亜株で過剰発現していることを見出した。分子Xのノックダウンあるいは過剰発現によって分子Xが大腸癌の転移において重要な役割を果していることを明らかにした。また、分子XがJAK-STATシグナル伝達経路によって制御されること、またチロシンフォスファターゼと結合して遊走能・浸潤能を亢進させることを見出した。
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