研究課題/領域番号 |
20K09118
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
秋山 正年 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80526450)
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研究分担者 |
坂爪 公 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (10837032)
鈴木 智之 東北大学, 大学病院, 助教 (10837157)
齋木 佳克 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50372298)
細山 勝寛 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (70837046)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トロンボモジュリン / 体外循環 / 血小板 |
研究実績の概要 |
人工心肺は心臓外科開心術において必須な機械的循環補助手段であるが、術後血小板減少とそれに続発する出血傾向をよく経験する。本研究ては、Thrombomodulin(TM)投与によって体外循環中の血小板減少を抑制し得るという仮説のもと、ラットの体外循環モデルによる実証実験を行う。
まず、以下に詳述する具体的手法によりラット体外循環モデルを確立した。 ラットを吸入麻酔薬による全身麻酔下で気管内挿管し、右大腿動脈内に24Gのカテーテルを留置し動脈圧モニタリングと採血ルートとする。尾動脈に22Gカテーテルを留置し、人工心肺送血路とする。17Gの多孔性のカテーテルを右内頚静脈から右心房、下大静脈まで進めて脱血路とする。実験群を5群に分ける。シャム群はカニュレーションのみ行い、コントロール群とトロンボモジュリン群では、同様のカニュレーション後、軽度低体温34度にて流量40ml/kg/minで体外循環を開始し、3~5分間で徐々に50~55ml/kg/minまで上げてゆき、動脈波形が安定したところで100mL/kg/minで人工心肺を90分間駆動させる。体外循環終了後、60分間人工呼吸器を継続したのちKCL投与により安楽死させる。術中動脈圧、心拍数、直腸温を記録し、術前、体外循環開始後15分、体外循環終了直後、体外循環後1時間に採血し、血球計数を行う。また、遠心した血漿を用いて凝固系検査を行う。心臓、肺、腎臓、肝臓、脳を採取し、ホルマリン固定を行う。それらの病理組織学的評価を行い、特に微小血栓に関して定量的比較検討を行う。 小動物の血管へのカニュレーション操作の習熟に時間を要したものの、比較的安定した体外循環モデルを確立することを成し得た。現在、各実験群にランダムにラットを割り付けし、データを蓄積している段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の実験計画よりやや遅れている理由としては、COVID-19感染拡大による大学院生の実験研究実施に制限を付された時期があったことがまず挙げらる。また、人体に適応さえる人工心肺装置を大動物に使用する経験はあっても、ラットのような小動物に応用を試みるのは本学において初めての試みであったため、当初、カニュレーションを含む実験手技が安定していなかったためてある。中には、右房内カニュレーションが困難な場合もあり、手技中に右房損傷をきたした例も見られた。その改善策として、ラットを購入する時は週齢だけではなく、重さもできるだけ大きめの個体にそろえるよう留意し、体内にカニュレーションされるカニュラの長さを事前に想定し測定した上で、適切に挿入するように配慮したことにより右房損傷が見られなくなっている。 実験中、動脈収縮期ならびに拡張期血圧, 平均動脈圧, 心拍数, 直腸温等のバイタルサインが実験終了まで安定して推移するようになった事実から判断し、計画された手技、サンプリングされた血液学的評価についても、評価に値する結果を得ることができたと考えられ、この実験モデルを予定通り採用することとした。 現在までのところ、Sham群1例、コントロール群5例、トロンボモジュリ高用量群4例、トロンボモジュリ中用量群3例の実験を完遂しデータ蓄積を行った。
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今後の研究の推進方策 |
現時点でモデル作成は安定してると考えている。さらに各群のn数を増やし、評価項目をまとめていく。また、病理学的評価については、医学研究科内のプラットフォームを活用し、標本作成を依頼する。凝固系検査は、Elisa kitを購入し、Elisa手技の習熟を行いながら、評価項目を検討していく。可能な限り、9月中に動物実験を完遂することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的に研究を行った結果、次年度使用額が生じたが、引き続き本研究の消耗品購入に充てる。
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