研究課題/領域番号 |
20K09124
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 英樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (50732707)
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研究分担者 |
荏原 充宏 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, グループリーダー (10452393)
宇都 甲一郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者 (30597034)
加藤 竜司 名古屋大学, 創薬科学研究科, 准教授 (50377884)
成田 裕司 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60378221)
緒方 藍歌 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (70718311)
蟹江 慧 近畿大学, 工学部, 准教授 (80636407)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ボーンワックス / 生体吸収性 / ポリマー / ペプチド / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
骨切開を伴う手術では骨切断面から多くの出血を伴うため、一般的にはボーンワックスで骨切断面にパッキングする物理的な止血法が用いられている。しかしボーンワックスは非分解・非吸収性であるため、残存による骨癒合・治癒阻害や術後感染等の合併症を助長する可能性がある。さらに骨癒合・再生の遅延は術後の社会復帰を妨げ、患者のQOLに影響を及ぼす。従って、これらが解決できる新たな骨切断面に用いる止血材料の開発は多くの患者に有益である。研究代表者らは、独自技術で開発したポリカプロラクトン(PCL)をベースとした生体吸収性ポリマーと骨再生誘導ペプチドによる新規骨髄止血材料を創出してきた。しかし、ポリマー、ペプチドの設計条件によって操作性や骨再生能に影響を及ぼすことが判明した。本研究では、材料の質的向上を図るため、各設計条件を見直す基礎研究を行い、さらに前臨床研究も含めた動物実験にて有用性を検証する。 本年度では、骨再生促進のためのペプチドによる材料界面設計をおこなった。材料表面の物理化学的特性(疎水性や電荷など)は細胞に影響を与えることがわかっているが、どのような物理科学的特性が細胞に対しどのように影響するかを調べる方法はない。そこで20種類のアミノ酸から、同アミノ酸を3残基に配列したペプチド(例:GGGやAAAなど)を材料表面を修飾する固定化ペプチドアレイを作成した。固定化ペプチドアレイではアミノ酸配列により骨芽細胞の細胞接着や細胞伸展に変化がみられた。また、ペプチド20種類から2つを組み合わせた固定化ペプチドアレイ(例:GGGとAAAなど)では、骨芽細胞のミトコンドリア活性もみられた。細胞応答クラスターを物理化学的特性値指標で分類すると、材料表面の物理化学的特性は細胞の応答を制御できる可能性があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況として、本年度ではペプチド配列条件や材料表面修飾による細胞応答の検討において有意な結果が得られた。しかし、より効果的にペプチドをポリマーに付与する方法(混合または化学修飾)の条件検討の追加が必要であることが判明した。このことから当初の計画である動物実験の検討に至っておらず、進捗がやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、 In vivo 検討を行う。止血能や骨形成能、操作性、安全性を確認するため、ウサギ胸骨正中切開モデルを用い評価する。電気丸ノコギリで胸骨を正中切開したのち、各止血材料で止血する。効果判定の比較対象群として、①ボーンワックス群、②新規ポリマー群、③ペプチド含有新規ポリマー群、④コントロール(sham)群の4群で行なう。継時的(4, 8, 12週)にCT画像評価や3点折り力学的強度測定、組織学的評価(HE染色、免疫染色など)を行なう。効果が得られた場合は、イヌもしくはブタを用いた胸骨正中切開モデルによる前臨床試験検討を行う。作成・評価方法は上記と同様に行う。本検討では、 研究代表者 伊藤および研究分担者の成田と緒方が行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報のアップデートおよび得られた知見を公表するための国内外旅費を計上したが、ほとんどの学会や研究会はweb参加となり、旅費を使用しなかっため差額が生じた。次年度では動物実験を行うため、動物や試験試薬の購入費、実験動物施設使用費等に使用する。また、国内外での学会発表のための旅費や成果を発表するための英文校閲費や投稿料として使用する予定である。
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