研究課題
令和3年度までに開発した、カルボキシル基付きDLCを用いて、血小板付着試験を施行した。血小板付着はコーティング無しのePTFEに対して、通常のDLCコーティングePTFE人工血管でも、カルボキシル基付きDLCコーティングePTFE人工血管でも有意に減少を認めたが、In-Vivoで動物に人工血管を植え込む形で全血接触をさせると、かなり速やかに大量の血栓形成を来した。この現象は、シャントでも動脈置換でも同様であった。このため、カルボキシル基付きDLCでは透析シャント用人工血管の血栓性改善は残念ながら望めないものと思われた。しかしながら、カルボキシル基付きDLCはむしろ血栓形成を促進するような塞栓デバイスのコーティングとして有用である可能性が示唆された。タンパク吸着試験では、カルボキシル基付きDLCはアルブミンの吸着が通常ePTFEより低下し(通常のDLCでは増加する)、フィブリノーゲンの吸着が通常のDLCより増加している(通常のDLCは、ePTFEのフィブリノーゲン吸着を増加させるが、それをさらに増加させた)。DCLコーティング後カルボキシル基付加処理を短時間行うだけで、かなり劇的な血液適合性の変化が得られた。これは用途に応じたDLCの最適化について研究を発展させることが、DLCの医療応用に対して大きく貢献する可能性を示唆することを示した。また、親水性が明らかに向上するにも関わらず、明らかに血液適合性は低下しており、超親水性の有機コーティングが高い血液適合性と矛盾する結果となった。どのようなDLCがより血液適合性を向上させるのか?今後の検討が必要であると思われた。
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Journal of Photopolymer Science Technology
巻: 4 ページ: 289,297
10.2494/photopolymer.35.289
巻: 4 ページ: 303,308
10.2494/photopolymer.35.303