研究実績の概要 |
本研究では、腹部大動脈瘤の発症・進展におけるN型カルシウムチャンネルの意義について着目し、腹部大動脈瘤に対する新規治療法開発への足がかりとして、その重要性と分子機構を解明することを目的としている。 本年度は、まず高脂血症モデルのN型カルシウムチャンネルノックアウトマウス作成を行った。N型カルシウムチャンネルノックアウトマウス(α1Bノックアウトマウス)とapoEノックアウトマウス(以下apoE KO)を入手・交配し、N型カルシウムチャンネル/apoEダブルノックアウトマウス(以下DKO)を作成した。 次に、オス8~10週齢のDKOマウスとapoE KOマウスそれぞれに対してアンジオテンシンII(以下AngII、1,000ng/kg/min)あるいは生理食塩水を4週間、浸透圧ポンプを用いて投与した。生理食塩水を投与したマウスでは、体重、血圧、総コレステロール値、大動脈径などに関して群間で差は認められなかった(各N=5)。AngIIを投与したマウスについては、体重、血圧、総コレステロール値について群間で差は認められなかった。大動脈径については統計学的にわずかに有意でないものの、DKOマウスのほうで小さい傾向にあった。腹部大動脈瘤の発症率においても、統計学的にわずかに有意でないものの、DKOのほうで腹部大動脈瘤の発症抑制の傾向が認められた。免疫組織学的な検討においても、DKO群でapoE KO群と比べてマクロファージの病変部への浸潤が抑制されていることが確認された。
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