本年度は、細胞シートを3Dフリーザーで凍結することで、保存可能か否かを検討した。 ヒト線維芽細胞を3日間培養することで線維芽細胞シートを作製し、その線維芽細胞シートを11種類の細胞保存液にそれぞれ浸し、3Dフリーザーで凍結後に、-80℃に2時間保存した。非凍結線維芽細胞シートをコントロールとした。凍結保存した線維芽細胞シートは、解凍後、3日間培養した。解凍して3日後に、MTSアッセイによる細胞生存率を確認したところ、コントロールと比べて有意差が無かった細胞保存液は5種類あった。その5種類の細胞保存液の中で、3種類はDMSO含有細胞保存液であり、残りの2種類はDMSOを含有していない細胞保存液であった。また、解凍して3日間で、線維芽細胞シートが分泌したHGFおよびTGF-beta1の分泌量は、コントロールと同程度であった。 本研究では、プログラムフリーザーおよび3Dフリーザーを使用して、立体構造物である細胞シートの凍結について検討したが、実験結果は、プログラムフリーザーおよび3Dフリーザーなどの凍結装置、細胞保存液、凍結する細胞の相性が重要であることを示唆していた。同じ細胞保存液であっても、プログラムフリーザーおよび3Dフリーザーのどちらかを使用することで、解凍後の生存率が異なってくる。凍結させたい細胞に適した、凍結装置および細胞保存液を選択することで、これまで凍結が不可能であった細胞の凍結が可能になることが、本研究結果より示唆されたと我々は考えている。
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