研究課題/領域番号 |
20K09143
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
田邉 佐和香 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (00401993)
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研究分担者 |
樋口 翔平 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 医員 (00867848)
辻川 哲也 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 准教授 (30380033)
今村 好章 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 准教授 (40223341)
岡沢 秀彦 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50360813)
糟野 健司 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (60455243)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レドックス制御蛋白 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
【目的・背景】 大動脈瘤形成の病理学的プロセスはWnt/β-catenin経路によって調節されるMMPsやOPGの亢進によって発症・増悪することが報告されている。しかし、臨床的リスクファクターである喫煙などの酸化ストレスとの関連は不明である。 【方法】 手術前に酸化ストレス特異的核種64Cu-ATSM PET MRIを行い、64Cu-ATSMが集積した部位を正確に同定し、術中切離した大動脈壁でWnt/β-cateninの抑制因子であるレドックス制御蛋白nucleoredoxin(NRX)(Funato Y et al. Nat Cell Biol 2006)について大動脈瘤との関連を調べた。 【結果・考察】 定常状態ではレドックス制御蛋白は還元酵素により還元されてリサイクルされているが、還元酵素の能力を超える酸化ストレス下では酸化型が細胞外に放出されることが知られている。今回得られた大動脈壁の64Cu-ATSMの集積部で特異的にNRX、thioredoxin(TRX)の発現が低下していた。さらに、酸化ストレスとレドックス制御蛋白の関連を調べるため、ヒト大動脈平滑筋培養細胞に過酸化水素を添加したところ、NRXの発現量が低下した。NRX、TRXを化学的またはsiRNAで抑制するとβ-catenin、大動脈瘤促進因子Matrix metalloprotease(MMP)-2、7、9、Osteopontin (OPN)、osteoprotegerin (OPG)が用量依存的に増加した。これらの結果から酸化ストレスはNRX、TRXを介して大動脈瘤発症に関わっている可能性が示唆された。この予備実験結果を踏まえて、マウスを用いた実験に進んだ。マウスに腹部大動脈瘤を作成するため、ApoE ノックアウトマウスを入手し、ApoEノックアウトとTRX-Tgマウスを交配させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスを用いた実験において、野生型マウスとTRX-Tgマウスを用いたCaCl2の局所投与による大動脈瘤形成モデル作成を試みた。5匹行ったが、手術手技を安定させるのに3匹犠牲にし、CaCl2散布ができた2匹を6W後に犠牲死させて大動脈を確認したが、うまく瘤が作成できていなかった。このままこの方法を続行しても、結果が得られる可能性は低いと判断し、アンギオテンシンII持続投与法による大動脈瘤誘発方法に変更する方針とした。 ApoEノックアウトマウスを入手し、ApoEノックアウトとTRX-Tgマウスを交配させた。生まれたマウス(15匹)のうち、ApoE(-/-)TRX-Tgの両方が遺伝しているマウスをPCR検査で同定し、そのダブル発現のマウスと野生型ApoEノックアウトマウスにアンジオテンシンII持続投与を行う。現在、ApoEノックアウトとTRX-Tgマウスの交配で生まれたマウス(15匹)の尻尾を一部切除し、PCRでApoE(-/-)TRX-Tgが発現しているかを検査した。 動脈瘤作成方法を変更し、Apo Eノックアウトマウスを凍結杯から起こしたのちに、TRX-Tgマウスと交配させるのに時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
ApoEノックアウトとTRX-Tgが両方遺伝しているマウス(ApoE(-/-)TRX-Tg発現マウス)と野生型のApoE(-/-)マウスにアンギオテンシンII持続投与法による大動脈瘤誘発を行う。4W後に、誘発した大動脈瘤の瘤径、MMPs、OPG、OPNの発現量への影響を比較する。
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