マウス改めラット心筋梗塞モデルに対する骨髄由来MSC・脂肪由来MSCの治療効果の比較を検討した。実験準備として、ラット前下行枝結紮モデルでの心機能 の低下の評価が心エコーおよび、PVループを用いた評価を行った。ラット前下行枝が良好に結紮できたモデルにおいて、PVループは著明に変化しEFが低下し再現性を認めた。またモデルの生存率を上げる必要性があり、さまざま呼吸管理を試した結果、マスク換気を高粘土ゲルを用いて気密とする方法を考案し、成績が改善した(死亡率60%→30%)。ラット心臓前下行枝モデルに対して、骨髄由来MSC投与群、脂肪由来 MSC投与群、PBS投与群およびshamの4群にて比較検討を行った。脂肪由来MSCが死亡率が高く(死亡率80%)、効果が低い印象であった。骨髄由来MSC・脂肪由来MSCのアポトーシス抑制作用・抗炎症、抗線維化作用の比較に関して、骨髄由来のMSCに関して、抗炎症および抗線維化作用の検討を行った。無血性培地を用いることにより、通常培養および低酸素培養にてTSG-6のmRNA発現が著明に増加すること、HGFの分泌は、無血性培地では十分とは言えなかったが、低酸素を併用することにより増加することが判明した。一方で、モデルの安定性が問題であることも判明した。モデルに発生した心筋梗塞量に関して、van Gieson染色による心筋梗塞部位の面積は同様のLAD結紮手技においても違いが大きく心筋梗塞量の定量が必要であると考えられた。心筋梗塞量が決定してからMSCを投与するモデルに現在変更して、昨年までの検討が適切であったかどうかを再検証していく必要がある。このため、抗線維化作用を有する間葉系幹細胞による心筋梗塞後心機能低下の抑制が十分かどうかの検討は、低酸素培養にて結果が出る可能性があるものの、継続していく必要性があると考えられた。
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