研究実績の概要 |
世界的にドナー肺不足が問題となっているが、欧米ではドナー肺を増加させる目的で、移植不適と判断された肺を体外で灌流し、肺機能を再評価,もしくは治療を行うEx Vivo Lung Perfusion (EVLP)が開発され、臨床にて実績を上げている。本邦では脳死ドナー肺の約8割が移植に用いられており、移植不適と判断されたドナー肺は欧米より重い障害を有している可能性がある。しかしながら、全肺で移植不適と判断されても、未だ局所的に肺機能が維持されている可能性があるとの発想から、全肺で移植不適でも肺葉移植の可能性があると仮説を立てた。仮説を証明する方法として、初めにブタの肺炎モデルを作成し、安定してドナー肺の下葉もしくは上葉に、程度の異なる肺炎・肺障害を起こす方法を確立した。これら局所肺炎を生じさせたモデルを用い、産総研と共同開発した体外肺灌流装置によって局所肺機能評価を実施する予定であったが, COVID19感染症拡大に伴う移動制限、実験制限により予定が大幅に遅延かつ縮小せざるを得ない状況となった。このため、目的を達成すべく、研究協力者である産総研グループが実施中であった、体外肺灌流装置を用いた肺の局所的な機能評価実験と共同することで、同時に気管支鏡データ、呼吸パラメータ、循環パラメータ、選択的血液ガス分析、生化学的データを蓄積することが可能になった。これらを元に、新たな局所肺機能評価を示唆するパラメータを解析中である。さらに、採取された灌流液、肺組織を用いて炎症性サイトカイン、ATP、病理組織学的評価、免疫染色による評価を実施しており、それら結果と肺葉移植適応との関係が詳細に検討される予定である。
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