研究課題/領域番号 |
20K09160
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
河谷 菜津子 群馬大学, 医学部附属病院, 医員 (80805557)
|
研究分担者 |
矢島 俊樹 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20346852)
大瀧 容一 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (00625402)
中澤 世識 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60791978)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 免疫チェックポイント分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、我々が独自に確立した抗原特異的疲弊化CD8T細胞を生体内の10~50倍程度誘導するモデルを用いて、その疲弊化に関与する各免疫チェックポイント分子(PD-1,CTLA-4,LAG-3,TIM-3,TIGIT)の役割を明らかにし、有効な癌免疫療法の開発を目指す。 モデルでは、OT-Iマウス(OVA257-264特異的T細胞レセプタートランスジェニックマウス)の脾臓からナイーブCD8T細胞を単離しC57BL/6マウスに移入後、EG.7(卵白アルブミン産生EL-4細胞)を皮下接種し、抗原特異的疲弊化CD8T細胞(疲弊化OT-I細胞)を誘導し解析した。前年度までにおいて腫瘍接種後誘導されるOT-I細胞は、各免疫チェックポイント分子の発現(LAG-3、TIM-3、TIGIT)が一部の細胞のみで発現するヘテロな細胞集団で、さらにその発現時期も異なることが明らかとなっていた。続いて、その発現意義を明らかにするため、各免疫チェックポイント分子を発現した細胞の機能の違いを評価した。機能の評価をペプチド 刺激後のIFN-γ発現と細胞傷害活性蛋白であるグランザイム発現で検討した。ペプチド刺激後のIFN-γ産生細胞においてTIGITまたはLAG-3の発現細胞は、TIM-3発現細胞と比べ低下していた。それらの免疫チェックポイント分子の共発現で詳細に検討したが、どの組み合わせでも特にIFN-γの産生が低下した細胞分画を同定できなかった。グランザム発現においては単染色でどの細胞でも同程度の発現を示し、共発現でも特にその発現が低下している分画を同定できなかった。これらのことからTIGITとLAG-3の発現細胞では疲弊化が進んでいる可能性が示唆されたが、その組み合わせで特別な疲弊化細胞を同定できないことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究において、TIM-3発現細胞は、IFN-γ産生能が高く疲弊化マーカーにならず活性化マーカーの可能性があった。一方、TIGITまたはLAG-3発現細胞がその機能が低く耐性に関与している可能性が考えられた。抗TIGIT抗体または抗LAG-3抗体を用いてその抗腫瘍効果への意義を検討していける状況であり、次年度はこの成果をもとに更なる研究がすすめられる。よって全体を通して当初の研究計画に沿って進行できているため「概ね順調に進展している」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、このモデルを用いて腫瘍免疫応答のおけるLAG-3とTIGITの役割を明らかにしていく予定である。抗LAG-3抗体または抗TIGIT抗体をこのモデルで投与し抗腫瘍効果およびOT-I細胞の増殖への影響を検討していく予定である。その上で、抗腫瘍効果を認めた抗体投与後のOT-I細胞の機能を評価するために、グランザイム発現とIFN-γ産生を評価する。より有効な抗腫瘍効果が得られる投与時期、投与量のスケジュールも検討する。さらに抗PD-1抗体とその免疫チェックポイント分子に対する抗体を併用して抗腫瘍効果を検討し、より有効な癌免疫慮法の確立を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究でおおむね予定通りすすみ研究費を使用し、次年度でも同様な研究を予定通り引き続きを行うため今年度の残額と次年度使用額と合わせて使用する必要性がある。
|