研究課題
マウス肺がん細胞株ASB-XIVは、PD-L1を高発現しており、皮下に形成した腫瘍組織には、多くのPD-1+CD8+T細胞が腫瘍内に浸潤している。しかしながら抗PD-1抗体単剤では、8匹中3匹のマウスでは奏功するが、5匹は耐性を示した。このことから腫瘍反応性のT細胞の誘導が不十分であると考えられた。令和2年および3年度に、抗PD-1抗体が奏功したマウスの脾細胞から、ASB-XIV反応性のCD8+T細胞ラインを樹立し、このT細胞がPhf3遺伝子のミスセンス変異に由来するネオアンチゲン(mPhf3)を認識すること、mPhf3ペプチドパルスDCがASB-XIV担癌マウスに対して部分的に抗腫瘍効果を示したが、腫瘍を完全に消失させることはできなかったことを報告した。mPhf3-DCと抗PD-1抗体を併用すると、mPhf3-DC単独、抗PD-1抗体単独に比べて、より多くのmPhf3反応性CD8+T細胞が腫瘍内に誘導され、15匹中14匹で腫瘍が完全に消失した。ASB-XIV担癌マウスに対して、mPhf3特異的CD8+T細胞ラインを1x10^7投与することによっても、腫瘍は完全に退縮した(5匹中5匹)。ASB-XIVと同様に抗PD-1抗体が効きにくいマウス胃がん細胞株YTN16についても、これまでにネオアンチゲンmCdt1を同定している。mCdt1ペプチドパルスDCと抗PD-1抗体の併用は、それぞれの単剤に比べて腫瘍内浸潤mCdt1反応性CD8+T細胞数を増加させ、高い抗腫瘍効果を誘導した。また、mCdt1特異的CD8+T細胞株をYTN16担癌マウスに投与することによっても、YTN16腫瘍は退縮した。以上の肺がん、胃がんマウスモデルの結果から、十分な数のネオアンチゲン特異的CD8+T細胞を腫瘍内に誘導することが、強い抗腫瘍効果を誘導するために必要であることが示唆された。
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