研究課題/領域番号 |
20K09163
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福井 絵里子 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90814591)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脂肪組織由来幹細胞 / 慢性閉塞性肺疾患 / 細胞移植治療 / 肺胞上皮細胞 / 肺再生 |
研究実績の概要 |
難治性呼吸器疾患は年々増加し、特に慢性閉塞性肺疾患は 2030年には世界の死因の第3位になると報告されている。しかし難治性呼吸器疾患の根治的な治療法は確立されておらず、肺移植以外の治療法の開発が急務であり、新たな再生医療の実用化が切望されている。幹細胞を用いた再生医療は近年の重要な研究領域の一つであるが、臨床応用に向けて解決すべき問題点は多い。そこで我々は脂肪組織由来幹細胞 (ADSCs)をII型肺胞細胞へ分化させ肺胞組織再生を行うことに焦点をおいた肺再生医療を開発するために本研究を計画した。 肺傷害モデルマウスに対するADSCsの治療効果を検討するために、肺気腫モデルマウスを用い、GFPで標識したADSCsをモデルマウスに尾静脈から投与した。投与1週間後、2週間後、3週間後に肺を摘出し、集積したADSCsの評価を行った。ADSCsを投与したマウスでは、投与していないマウスに比べ血液ガスの改善や組織学的に気腫肺の改善を認めた。また、傷害肺に、ADSCs の集積を認め、集積した ADSCs の一部に TTF-1やⅡ型肺胞上皮マーカー 陽性の細胞を認め、投与したADSCsが肺胞上皮へ分化する可能性が示唆された。これらの結果は、ADSCsが肺胞上皮細胞へ分化し補充することで、難治性呼吸器疾患の根治的治療の開発につながる可能性があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肺傷害モデルマウスに対するADSCsの再生効果を検討するために、GFPで標識したADSCsをモデルマウスに尾静脈から投与した。投与1週間後、2週間後、3週間後に肺を摘出し、集積したADSCsの評価を行った。傷害肺に、ADSCs の集積を認め、集積した ADSCs の一部に TTF-1やⅡ型肺胞上皮マーカー 陽性の細胞を認め、in vivo で肺胞上皮へ分化する可能性を示すことができた。しかし脱細胞化組織骨格を使用した肺の立体組織の構築に関しては一部予定通りの進捗が得られておらず、実験系の検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
傷害肺に対してより効果的な細胞治療を行うため、投与するADSCsの最適な濃度や投与量、投与回数を検討し、効率的な投与量を確立する。さらに、集積したADSCsを解析し、再生促進因子を同定し、投与細胞の賦活化の検討を行う。動物モデルでの肺胞再生の評価は、採取した肺組織、動脈血液ガス、小動物呼吸機能、小動物CT、換気血流シンチ、超偏極129Xe-MRIを用いて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験施設の改修工事が行われ、動物実験が当初より進まなかったため。次年度へ実験計画をずらし施行する予定である。また、COVID-19 のため予定していた学会発表や出張がなくなり、その分の経費を次年度へ繰り越す予定である。
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