研究課題/領域番号 |
20K09164
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡崎 幹生 岡山大学, 大学病院, 講師 (50467750)
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研究分担者 |
大谷 真二 岡山大学, 大学病院, 助教 (10770779)
山根 正修 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (20432643)
坂上 倫久 愛媛大学, 医学系研究科, 講師(特定教員) (20709266)
豊岡 伸一 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30397880)
山本 寛斉 岡山大学, 大学病院, 助教 (40467733)
木下 理恵 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40518297)
杉本 誠一郎 岡山大学, 大学病院, 准教授 (40570148)
阪口 政清 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70379840)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺移植 / 虚血再灌流障害 / S100 |
研究実績の概要 |
重症肺疾患に対して、肺移植手術が唯一残された治療法となることがあるが、一時的な虚 血と血液の再灌流により炎症が生じる虚血再灌流障害は依然として肺移植時の大きな問題点である。肺移植後の移植肺の機能不全は虚血再灌流障害によるものがほとんどで、基礎研究による肺虚血再灌流障害の分子メカニズムの解明や革新的治療薬が開発できると、肺移植による治療成績が格段に向上する。最近申請者らは、経時的かつ網羅的遺伝子発現解析から、肺虚血再灌流後に最も早期に過剰発現する遺伝子としてS100A8/A9を見出した。S100A8/A9は、多様な炎症反応の引き金となるためIRIの治療のターゲットとして極めて有望である。本研究では、申請者らが開発したS100A8/A9を標的とした中和抗体を用いて、肺虚血再灌流障害の抑制効果を検証し、臨床応用に向けたProof of Conceptを確立することを目的とする。 マウス肺虚血再灌流障害モデルでS100A8/A9中和抗体の効果を検証した。抗体を投与した30分後に左肺を60分クランプし(虚血)、再灌流後120分に評価し、Control群と比較・検討した。虚血再灌流障害群(IgG Control群)はSham群と比較して、有意にPaO2が低下していた。それに対して、S100A8/A9中和抗体投与群ではControl群と比較して、優位にPaO2が改善していた。病理組織学的にもS100A8/A9中和抗体群では、Control群と比較して、虚血再灌流障害に伴う炎症細胞浸潤が有意に抑制されていた。S100A8/A9中和抗体による肺虚血再灌流障害抑制効果がみられることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経時的かつ網羅的遺伝子発現解析から、肺虚血再灌流後に最も早期に過剰発現する遺伝子としてS100A8/A9を見出していた。S100A8/A9は、多様な炎症反応の引き金となるためIRIの治療のターゲットとして極めて有望であると考えた。本研究では、S100A8/A9を標的とした中和抗体を用いて、肺虚血再灌流障害の抑制効果を検証し、臨床応用に向けたProof of Conceptを確立することを目的としていた。 マウス肺虚血再灌流障害モデルでS100A8/A9中和抗体の効果を検証した。抗体を投与した30分後に左肺を60分クランプし(虚血)、再灌流後120分に評価し、Control群と比較・検討した。S100A8/A9中和抗体群のほうが再灌流後のPaO2が有意に良好であり、S100A8/A9中和抗体による肺虚血再灌流障害抑制効果がみられることがわかった。病理組織学的にもS100A8/A9中和抗体によって、虚血再灌流障害に伴う炎症細胞浸潤が抑制されていた。 当初の予定通り、S100A8/A9中和抗体による肺虚血再灌流障害の抑制効果の検証が行えており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初想定した通り、S100A8/A9中和抗体による肺虚血再灌流障害の抑制効果が明らかとなってきており、研究を推進していく。今後はさらにS100A8/A9中和抗体による肺虚血再灌流障害の抑制効果を検証していく。炎症性サイトカイン、ケモカイン、MAPKsの発現レベルをPCR法、ウェスタンブロッティング法で解析し、IRIを定量的に評価する。組織学的肺障害は、H&E染色を元に、細胞死(Tunnel染色、caspase 3)マーカーと細胞マーカーに対して多重蛍光免疫染色を行い、組織障害を細胞レベルで定量的に評価する。S100A8/A9/RAGE/TLR4シグナルによって産生される遺伝子転写翻訳産物についての蛍光免疫染色を、Control群と治療群で比較・検討することで、S100A8/A9中和抗体の作用機序についても併せて解明する
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)COVID-19の影響もあり、出張ができず、旅費の使用ができなくなった。また動物実験の回数も予定より少なくなり、実験動物、縫合糸、各種抗体の使用が想定より少なかった。
(使用計画)実験動物、実験用縫合糸の他、ウエスタンブロッティング・PCR等に使用する各種抗体や、染色用試薬に使用する。また、動物飼育料、機器使用料、学会参加費等にも使用する計画である。
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