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2020 年度 実施状況報告書

肺癌の遺伝子多様性に基づく新規治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K09168
研究機関大分大学

研究代表者

杉尾 賢二  大分大学, 医学部, 教授 (70235927)

研究分担者 宮脇 美千代  大分大学, 医学部, 講師 (30404388)
阿南 健太郎  大分大学, 医学部, 助教 (60468006) [辞退]
小副川 敦  大分大学, 医学部, 准教授 (90432939)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード非小細胞肺癌 / 進化系統樹 / 遺伝子多様性 / 腫瘍内不均一性 / バイオマーカー
研究実績の概要

原発性肺癌は完全切除が行われても再発率は約50%あり、5年生存率も40~60%と未だ難治性ともいえる癌であり、手術に加えて薬物治療を必要とする集学的治療が必須であり、正確な適応基準の解明は重要な課題である。腫瘍内遺伝子多様性(intratumor heterogeneity)は治療の感受性や耐性を規定する重要な因子であり、近年の次世代シーケンサー(NGS)の開発により、その解析が可能となり臨床に導入されるに至った。本研究では、手術時の標本から早期変異(clonal)主体の癌細胞と進展変異(subclonal)を有する癌細胞という空間的多様性を検討する。これで得られたsubcloneを指標に、手術後の定期的な血液解析と再発時腫瘍組織の解析(molecular monitoring)から再発早期発見や治療開始の指標とする。本研究の成果により、正確な手術を含めた治療基準の設定、集学的治療の適応、種々の治療の適応、再発前の早期治療開始などに結び付くことができる可能性を有した重要な研究課題である。
本研究では、非小細胞肺癌の手術症例のドライバー遺伝子陽性症例と陰性症例の、原発巣およびリンパ節転移巣・遠隔転移巣から核酸を抽出し、NGSにより網羅的遺伝子解析を行い、遺伝子変異の進化系統樹を作成することで遺伝子多様性・腫瘍内不均一性(空間的多様性)を明確にする。また、同一患者の術後経過観察中の血液を定期的に採取し、cfDNAを調整し、NGSによる遺伝子解析を行い、切除検体試料に認められた遺伝子変異の検出を試みる。さらに術後再発症例やその治療経過中の組織検体と血液検体(cfDNA)からのNGS解析(時間的多様性)により、腫瘍クローンを追跡し、治療効果との関連や耐性との関係を解析し、新たな治療体系の構築・開発に結び付けることを目的とする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

非小細胞肺癌の手術症例のドライバー遺伝子陽性症例と陰性症例について、原発巣およびリンパ節転移巣・遠隔転移巣から核酸を抽出し、NGSにより網羅的遺伝子解析を行い、遺伝子変異の進化系統樹(phylogenetic tree)を作成することで遺伝子多様性・腫瘍内不均一性(空間的多様性)を明確にする。
次に、病理病期II~III期の非小細胞肺癌患者の術後経過観察中の血液を定期的(約6か月毎)に採取し、cfDNAを調整し、NGSによる遺伝子解析を行い、手術時の切除検体試料に認められた遺伝子変異の検出を確認するとともに、相違点を解析する。再発時、薬剤投与後耐性時には血液採取とともに再発組織を採取しNGS解析を行い、再発の因子を検討する。この遺伝子変異の系統樹(phylogenetic tree)を作成し、時間的多様性を検討する。
初年度は、切除標本の肺癌原発巣のドライバー遺伝子の解析を行い、2020年4月から2021年3月までの58例の腺癌のうちEGFR変異24例、ALK1例、KRAS2例、RET1例、ERBB-2 1例を認めた。これら変異陽性症例のうちII, III期はEGFR2例(L858R, 19del)、ALK1例のみであった。これらについて、継時的に血液採取を予定した。本研究の対象となるII, III期のドライバー遺伝子変異症例が予想より少なかったため、過去の肺癌手術症例で再発し、継時的に組織標本(切除、生検)や血液を採取した症例も対象として同意取得を行い、それらの解析を今後予定している。
また、主にドライバー遺伝子変異陰性症例の腫瘍免疫のT細胞解析を、MHC class I/II発現とβカテニン経路から免疫組織化学的に解析を進め、いずれの発現もドライバー遺伝子変異陽性症例に比較し有意に亢進していることが認められた。

今後の研究の推進方策

本研究は、癌の遺伝子変異の進化系統樹(phylogenetic tree)を作成することで遺伝子多様性・腫瘍内不均一性の持つ臨床的意義(予後予測、薬剤感受性)を解明するための基礎になる研究である。また、血液のcfDNA解析から分子レベルでの再発の早期発見のバイオマーカーを確立することが目標であり、診断と新たな治療開発の基盤となる。経時的な検体採取において新たな遺伝子変異が同定できない場合(時間的多様性)でも、原発巣と転移巣の進化系統樹の作成は可能であり、そこから得られる情報は有用である。
今年度は、これまでに採取したサンプルについて、予定の解析を進める。

次年度使用額が生じた理由

研究対象となる非小細胞肺癌II-III期のドライバー遺伝子変異症例が予想より少なく、標本の採取のみにとどまり、解析に進んでいない。2年目にさらに症例と標本を採取し、解析に入る予定とした。そのため、初年度に予定した予算を2年目に繰り越すこととした。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件)

  • [雑誌論文] Ciliated muconodular papillary tumor of the lung: a case report and literature review.2020

    • 著者名/発表者名
      Abe M, Osoegawa A, Miyawaki M, Noda D, Karashima T, Takumi Y, Hashimoto T, Okamoto T, Daa T, Sugio K
    • 雑誌名

      Gen Thorac Cardiovasc Surg

      巻: 68(11) ページ: 1344~1349

    • DOI

      10.1007/s11748-019-01252-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Tumor mutation burden as a biomarker for lung cancer patients treated with pemetrexed and cisplatin (the JIPANG-TR).2020

    • 著者名/発表者名
      Sakai K, Tsuboi M, Kenmotsu H, Yamanaka T, Takahashi T, Goto K, Daga H, Ohira T, Ueno T, Aoki T, Nakagawa K, Yamazaki K, Hosomi Y, Kawaguchi K, Okumura N, Takiguchi Y, Sekine A, Haruki T, Yamamoto H, Sato Y, Sugio K
    • 雑誌名

      Cancer Sci.

      巻: 112(1) ページ: 388~396

    • DOI

      10.1111/cas.14730

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 原発性肺癌におけるPD-L1発現とリンパ節転移の関連2021

    • 著者名/発表者名
      小副川 敦
    • 学会等名
      第121回日本外科学会定期学術集会
  • [学会発表] PD-L1強陽性の大細胞癌とEGFR遺伝子変異陽性の腺癌を合併した1治療例2021

    • 著者名/発表者名
      宮脇 美千代
    • 学会等名
      第18回日本臨床腫瘍学会学術集会
  • [学会発表] The significance of tumor PD-L1 expression in resected primary lung cancer.2021

    • 著者名/発表者名
      小副川 敦
    • 学会等名
      第18回日本臨床腫瘍学会学術集会
  • [学会発表] 肺癌転移における所属リンパ節内血管新生の役割2021

    • 著者名/発表者名
      安部 美幸
    • 学会等名
      第121回日本外科学会定期学術集会
  • [学会発表] 局所進行肺癌における導入療法の検討2020

    • 著者名/発表者名
      宮脇 美千代
    • 学会等名
      第120回日本外科学会定期学術集会
  • [学会発表] EGFR T790M 変異を有する非小細胞肺癌に対するオシメルチニブの獲得耐性メカニズム2020

    • 著者名/発表者名
      山口 正史
    • 学会等名
      第79回日本癌学会学術集会
  • [学会発表] Mechanisms of acquired resistance to osimertinib in advanced NSCLC with EGFR T790M mutation (LOGIK1607).2020

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi M
    • 学会等名
      第79回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 肺癌治療に関連する肺門・縦隔リンパ系の肉眼解剖学的検討2020

    • 著者名/発表者名
      安部 美幸
    • 学会等名
      第73回日本胸部外科学会定期学術集会
  • [学会発表] 非小細胞肺癌手術症例における PD-L1 発現の検討2020

    • 著者名/発表者名
      阿南 健太郎
    • 学会等名
      第61回日本肺癌学会学術集会
  • [学会発表] 非小細胞肺癌術後局所再発症例に対する根治的化学放射線療法後のデュルバルマブ療法2020

    • 著者名/発表者名
      小副川 敦
    • 学会等名
      第61回日本肺癌学会学術集会

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公開日: 2021-12-27  

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