研究課題/領域番号 |
20K09169
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岩永 健裕 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 特任助教 (40518916)
|
研究分担者 |
佐原 寿史 鹿児島大学, 総合科学域総合研究学系, 准教授 (90452333)
関島 光裕 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 特任助教 (20568589)
有吉 勇一 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 学外協力研究者 (10643520)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 希ガス / 虚血再灌流障害 / 肺移植 / ミニブタ / アルゴン / 大動物 |
研究実績の概要 |
移植医療における臓器不足を克服するための条件の悪いドナーへの適応拡大の際は、虚血再灌流障害(IRI)による急性臓器不全だけでなく、免疫学的因子の活性化による急性・慢性拒絶の増加が懸念される。化学的には不活性なヘリウムやアルゴン(Ar)、キセノンなどの希ガスによる抗炎症・抗アポトーシス作用などを介した細胞保護効果が示されているが、大動物モデルでの評価は十分ではない。そこで我々は、希ガスのうち、入手が容易・安価でかつ麻酔作用のない安全性が高いというアルゴンを用いて、その細胞保護効果の移植医療への応用性を評価する研究を行っている。 クラウン系ミニブタを用い、左肺動静脈および主気管支遮断による温虚血90分後に遮断を開放し、IRIを誘発するモデルに対し、Ar吸入群では30%酸素+70%Ar、対照群では30%酸素+70%窒素を虚血前150分、虚血中90分、再灌流後120分の計360分間吸入した結果、①動脈血を用いた血液ガス評価では、90分間の温虚血によって、対照群では動脈血P/F比が虚血前から再灌流2時間後にかけて有意に低下したものの、Ar吸入群では、良好に維持された。②障害肺の機能を直接評価するため肺静脈穿刺によるPVガス評価を行ったところ、Ar吸入群で有意に良好なP / F比を示した。③術後早期の胸部X線評価や再灌流後2時間および2日の生検による組織学的評価では、Ar吸入群で良好な所見が示された、という結果を得ており、令和3年度は、さらに詳細な病理学的(免疫染色)、組織の遺伝子発現、再灌流後の血清サイトカイン定量などをもとに、アルゴンによるIRI抑制機序について評価を行った。この結果、抗炎症作用よりも、抗アポトーシスあるいは抗酸化作用が作用機序の主体であることを示唆する結果を得ている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、ミニブタ肺虚血再灌流障害モデルを用いて、アルゴン吸入による虚血再灌流障害抑制効果を示すことができおり、さらに令和3年度はその機序について詳細な解析を行うことができた。従って、研究計画通り概ね順調に研究が進捗しているものと判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度までに得た、肺虚血再灌流障害に対するアルゴンの有効性に関して、国際学会での報告および国際学術論文誌への投稿を行う。また臨床応用性を更に評価するため、臓器移植モデルを用いて、アルゴンの有効性を評価する実験に着手する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、アルゴンの有効性を論文報告することを最優先課題とし、肺虚血再灌流障害モデの詳細な解析を行った。このため肺移植実験は次年度実施の方針とており、主として動物代に関する物品費が次年度使用額として計画されている。
|