研究課題/領域番号 |
20K09170
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
河野 光智 東海大学, 医学部, 准教授 (10276272)
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研究分担者 |
岩崎 正之 東海大学, 医学部, 教授 (90223388)
小松 晃之 中央大学, 理工学部, 教授 (30298187)
増田 良太 東海大学, 医学部, 教授 (10408057)
生駒 陽一郎 東海大学, 医学部, 講師 (40631792)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人工赤血球 / ヘモアクト / 出血性ショック |
研究実績の概要 |
HemoActはヒトヘモグロビン(HbA)またはウシヘモグロビン(HbBv)に平均3分子のヒト血清アルブミン(HSA)を結合した人工酸素運搬体である(HemoAct-H、HemoAct-B)。これまで、血液適合性試験、血中滞留性試験、安全性試験を行い、本製剤が人工酸素運搬体として充分な物性を兼ね備えていることを明らかにしてきた。50%出血性ショックラットにHemoAct-HまたはHemoAct-Bを投与し、循環動態観察、血液ガス分析、血液生化学検査から、人工酸素運搬体としての有効性を評価した。 Wister系雄性ラット(約230g)にセボフルラン吸入麻酔下で動脈カテーテルより全血液量の50%を脱血することで出血性ショック状態とし、15分後に静脈カテーテルより同体積のHemoAct-H、HemoAct-B溶液([Hb]=5g/dL)を投与することで蘇生した。参照群は、自己血(SAB)群、乳酸リンゲル液群、および手術のみのSham群とした。 乳酸リンゲル液群ではすべてのラットが4時間以内に死亡したのに対し、HemoAct-H、HemoAct-B、SAB、およびSham群ではすべてのラットが6時間後まで生存した。50%脱血による低血圧(平均動脈血圧:26mmHg)はHemoAct-H、HemoAct-Bの投与によりSAB群と同等値まで回復し、乳酸リンゲル液群よりも有意に高い値を推移した。出血性ショックに伴い、動脈血酸素分圧は増加し、動脈血二酸化炭素分圧は減少したものの、HemoAct-H、HemoAct-Bの投与によりそれぞれ初期値まで回復した。また、アシドーシスと乳酸値の上昇もHemoAct-H、HemoAct-B投与により改善された。 人工酸素運搬体 HemoAct-H、HemoAct-Bが出血性ショック状態の蘇生液として有効であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
循環血液量の50%を脱血するラット出血性ショックモデルを用いた蘇生実験で有効性評価を行い、各実験群の動物数を増やして統計学的解析を行った。ヘモアクトの投与により返血群と同様の100%生存率が得られ、呼吸循環動態が安定することを確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
肺切除モデルや気管移植モデルでの検討に着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染の拡大により緊急事態宣言の発出があり実験が中断せざるをえなかったことと、各学会がWEB開催となったことにより、次年度使用額が生じた。2020年度に出来なかった肺切除実験を2021年度に行うため助成金を使用する。
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