研究課題
前年度に引き続いて人工的前駆細胞開発を行った。ヒト初代培養細胞を用い、 いわゆる山中4因子を含む初期化リプログラミング因子をコードしたmRNAを細胞に導入し、17日かけて極めて増殖能力の高い細胞群が出現した。ほぼ同じプロトコールを用いて血管内皮細胞と気道上皮細胞の両方からコロニー形成能の高い前駆細胞様細胞が分離された。これらはiPS細胞のようにすべての細胞に分化し得る完全に初期化された細胞ではなく、血管内皮から出発した細胞には血管内皮の特徴が、気道上皮細胞から出発した細胞は気道上皮の特徴を保ったユニークな細胞であった。この中間的な前駆細胞は、mRNAの影響をキャンセルしもとの培養条件に戻すことにより、出発細胞に近い特徴をもった細胞に分化した。血管内皮細胞を例にとると、まず初期化因子を4日間作用させ、リプログラミング培地・幹細胞培地と順に培地変更すると、大きな細胞形態の変化はないままに成熟した血管内皮に発現する表面タンパク質CD31が急速に失われ、同時に増殖能が100倍程度高まった。これらの誘導細胞をもとの血管内皮培地に戻すと、1週間程度で自然にもとのCD31発現を取り戻すというダイナミックな変化を見せた。同様の実験は肺上皮細胞に対しても行われ、同様に肺胞上皮タンパク質の発現低下と再現というダイナミックな変化が見られた。これらの細胞を同時にマウススケール還流型臓器培養バイオリアクターに投入し、脱細胞化肺の再生を行っている。
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