研究実績の概要 |
これまでに、非小細胞肺癌の細胞株を用いた実験で、殺細胞性抗がん剤に耐性を持った肺癌細胞ではFOXM1発現が上昇していること、およびshRNAを用いたFOXM1発現抑制実験により、FOXM1抑制による殺細胞性抗癌剤(PTX)の感受性改善が示された。以上よりFOXM1抑制による抗癌剤の効果改善が示された。 前年度より、特に肺癌の中でも、小細胞肺癌(SCLC)や大細胞神経内分泌癌(LCNEC)などの高悪性度肺神経内分泌腫瘍(HGNEC)でFOXM1の発現が高いことに着目した。HGNECでは手術単独での予後が不良であり、化学療法の治療効果の改善が期待されている。 HGNEC細胞株について、ASCL1, NeuroD1, POU2F3, YAP1の4つのサブタイプの4つの転写因子の発現を確認したところ、FOXM1発現は、非ASCL1 typeのNeuroD1 typeでの高発現が認められた。実際の切除検体において、HGNECの切除検体を約200例について、免疫組織化学染色でFOXM1と各サブタイプについて解析をしたところ、ASCL1やNeuroD1などの神経内分泌的特性の高い検体でFOXM1発現が高いことが示された。 SCLCにおいて、FOXM1の阻害剤と抗腫瘍薬の併用効果を予測し、ATRやChk1などのDDR阻害剤の併用を行ったところ、効果はそれほど高いものではなかったが、Chk1阻害剤にはmTOR阻害剤が有用である可能性が示された。 以上から、本研究において、FOXM1はNSCLC,SCLCのいずれでも高発現であること、殺細胞性抗がん剤の感受性・耐性に関与していること、HGNECで新規治療標的となりうること、併用によりその作用が増強する可能性があることを示した。
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