研究実績の概要 |
今までの研究で、胸腺癌(7例)と胸腺腫(8例)をHuman Methylation 450K DNA Analysis Kit(illumina)を用いて47万のCpG siteのDNAメチル化を網羅的に検索した。解析はIllumina Methylation Analyzer(http://www.rforge.net/IMA/)を使用し、胸腺腫と比較して有意に胸腺癌でDNAメチル化の多い93個のCpG islandを抽出した(Lung cancer 111, 116-, 2017)。その中から、癌関連遺伝子と予想される7遺伝子(GNG4, GHSR,SALL3, HOXD3, GAD1, NPTX2, MT1A)をpick upした。正常胸腺18例、胸腺腫30例、胸腺癌16例から、DNA抽出し、Bisulfite処理を行った。GNG4、GHSR、HOXD9、SALL3遺伝子について、pyrosequenceを行い、DNAメチル化の割合を検討した。4遺伝子において、胸腺癌のDNAメチル化の頻度は、正常胸腺と胸腺腫と比較して、有意に高値であった。(遺伝子:胸腺癌DNAメチル化頻度 vs 胸腺腫のDNAメチル化頻度=GHSR:55.4 vs. 36.5, GNG4: 23.2 vs. 7.7, HOXD9: 39.0 vs. 9.6, SALL3: 23.3 vs. 4.2)。胸腺上皮性腫瘍において、臨床病期の早期の腫瘍と進行した腫瘍の間で、DNAメチル化の頻度の違いを認めなかった。しかし、DNAメチル化の頻度の高い腫瘍は、低い腫瘍と比較して、無再発生存率が有意に悪かった。4遺伝子のDNAメチル化の頻度を検討すると、正常胸腺→胸腺腫→胸腺癌と悪性度が高くなるにつれて、DNAメチル化の頻度が高くなる傾向を認めた。現在、残りの3遺伝子のDNAメチル化、mRNAの発現を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
胸腺上皮性腫瘍のDNAメチル化を網羅的に検索し、pick upした7遺伝子(GNG4, GHSR, SALL3, HOXD3, GAD1, NPTX2, MT1A)のうち、4遺伝子(GNG4, GHSR, SALL3, HOXD3)について、正常胸腺18例、胸腺腫30例、胸腺癌16例のDNAメチル化の検討を終了している。現在、残りの3遺伝子(GAD1, NPTX2, MT1A)について、DNAメチル化、mRNA (RT-PCR), 蛋白(免疫染色)発現の検討を行っている。当初、方法(pyrosequence, RT-PCR, 免疫染色)が同じなので、方法ごとに実験を行う手順であったが、各遺伝子でDNAメチル化、mRNA発現、蛋白発現の関係が異なるので、現在、遺伝子ごとに実験を行っている。DNAメチル化とmRNAの発現が相関しない場合は、蛋白発現の実験を中止している、7遺伝子すべてのDNAメチル化は終了し、現在、GAD1, NPTX2, MT1A はmRNAの発現を検討しているので、最初に計画した実験より進んでいると思われる。さらに、GHSRに関しては、isoformが複数見つかり、腫瘍特性と関連する可能性があるので、RT-PCRでisoformの発現を検討している。当初、この計画はなかったが、興味ある所見であるので、加えた。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、当初、計画している実験を行う。変更点は、当初、方法(pyrosequence, RT-PCR, 免疫染色)が同じなので、方法ごとに実験を行う手順であったが、各遺伝子でDNAメチル化、mRNA発現、蛋白発現の関係が異なるので、現在、遺伝子ごとに実験を行っている。DNAメチル化とmRNAの発現が相関しない場合は、蛋白発現の実験を中止している。さらに、GHSRに関しては、isoformが複数見つかり、腫瘍特性と関連する可能性があるので、RT-PCRでisoformの発現を検討している。当初、この計画はなかったが、興味ある所見であるので、加えた。実験を行っている中で、興味ある結果が出た場合は、その都度、研究計画を改訂していくつもりである。
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