研究課題/領域番号 |
20K09180
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 勝也 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (60585743)
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研究分担者 |
大西 秀哉 九州大学, 医学研究院, 准教授 (30553276)
三好 圭 九州大学, 大学病院, 助教 (70755272)
山崎 章生 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80404440)
永井 俊太郎 九州大学, 大学病院, 助教 (90755240)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PTPH1 / 肺NET / 癌免疫治療 / 癌増殖 / 癌浸潤 / 癌遊走 / 癌線維化 / 癌組織浸潤リンパ球 |
研究実績の概要 |
チロシン脱リン酸化酵素:protein tyrosine phosphatase H1 (PTPH1)分子が肺NETに対する1) 診断補助因子、2) 予後予測因子、および3) 治療標的分子となり得るかを検証することが本研究の主目的である。本年度は、まず肺NETにおけるPTPH1分子の生物学的意義解析を行った。siRNAを用いてPTPH1遺伝子を抑制する系で増殖、遊走、浸潤試験を行った。肺NET細胞株として87-5、SBC5、S2を標的細胞として使用した。増殖、遊走、浸潤は87-5、SBC5ではPTPH1抑制により有意に低下した。しかし、S2では逆に有意に亢進した。浸潤のメカニズム解析として、上皮間葉転換関連因子やmatrix metalloproteinase(MMP)の蛋白発現解析を行った。その結果、浸潤抑制には上皮間葉転換を介していること、MMPは介していないことが分かった。また、87-5、SBC5ではPTPH1抑制によりpAKT、pERK発現が低下したことより、PTPH1のシグナルはチロシンキナーゼリン酸化を経て、PI3k経路、あるいはMAPK経路を介していることが示唆された。また、マウスを用いた治療実験としてPTPH1shRNAを導入した87-5細胞を用いて皮下移植し増殖試験を行った。その結果、PTPH1shRNAを導入した87-5で、有意に腫瘍体積が減少する結果が得られた。以上より、PTPH1分子は肺NETにおいて増殖、遊走、浸潤、腫瘍形成に関与しており、新規治療標的となり得ると考えている。しかし、一方で、S2細胞株では逆の結果が得られたことより、この違いがどのようなメカニズムから生じるかを今後検討する必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
肺NETにおけるPTPH1分子の生物学的意義解析が概ね終了した。マウスにおける治療実験結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
細胞株でPTPH1分子の生物学的役割が異なることが分かった。今後、そのメカニズムの解析を研究していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスやvitroの実験が何度も実験を繰り返すことなく再現性が得られたことが要因と考えられる。細胞株でPTPH1分子の生物学的役割が異なることが新たに分かったので、今後、そのメカニズムの解析に使用したい。
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