研究実績の概要 |
本研究は癌組織内の間質細胞の特性獲得機構を解明し、間質細胞の標的分子を制御する新規癌治療法を開発することを目的とした。具体的には、手術検体(摘出肺葉)から癌組織の内部、近隣部、遠隔部の3箇所の新鮮組織標本を採取し、間質細胞を培養増幅する。それぞれの組織から培養増殖した間質細胞における形態的や細胞生物学的特性を比較検討し、遺伝子やmicroRNAの発現情報を網羅的に解析する。 本研究は鹿児島大学IRBで倫理審査を受け、承認された上で実施した。原発性肺癌に対して肺葉切除が行われた症例に対して同一肺葉内の腫瘍組織内、腫瘍隣接部の正常肺、腫瘍から遠隔部の正常肺から組織片を採取し、以下の検討を行った。組織細切片の培養により、培養3日目から間質細胞の遊走が見られ、組織片から樹状に伸展する様子が観察された。腫瘍組織の組織片では、その他の組織片よりも遊走が活発である傾向を認めた。それぞれの組織変由来の間質細胞を単離し、細胞表面マーカー(CD45, CD90, CD105, PDGFR-α)を免疫染色で 調べた。その結果、調べた4項目において3群間で明らかな相違を認めなかった。単離した間質細胞の数を統一した上で上清のTGF-beta, VEGFを測定した結果、3群間で有意差を認めなかった。preliminaryな結果ではあるが、間質細胞の特性を網羅的に解析するRS2 profiler PCR arrayを用いて検討した結果、癌組織の間質細胞に特異的に発現する分子を特定することはできなかった。
|