原発性肺がんの切除検体を用いた検討を行った。肺葉切除検体から腫瘍部、腫瘍近接の肺組織、遠隔の肺組織の新鮮検体を採取し、小組織片を継代培養した。採取した組織片を約1 mm3の小片に細切し、Fibronectin-Coating培養皿にて“Explant”として混合間質細胞を分離・培養し、これを一定期間継代培養して増幅させた。40歳代から70歳代の腺癌症例4例から組織を採取した。2代目の接着細胞を採取し以下の検討を行った。採取された細胞は形態的に腫瘍細胞ではないことを確認した。蛍光免疫染色でVimentinとCytokeratinの両方に染まる細胞を認め、線維芽細胞(腫瘍間質細胞; CAF)を含む間質細胞であることを確認した。細胞外マトリックスと接着分子の候補を含むRT2 PROFILERキットを使用してPCRでcDNAの発現を調べた。遠隔肺の遺伝子発現を対照とした場合の腫瘍近傍肺、腫瘍組織における遺伝子発現の違いを調査した。その結果、96の遺伝子のうち少なくとも2症例で共通してupregulateまたはdownregulateした遺伝子の候補としてADAMTS8、CDH1、COL11A1、COL1A1、COL8A1、CTNND2、ICAM1、MMP11、MMP3、MMP7、MMP9、SPARC、THBS2、TIMP3、VCAM1、VTN、EPCAM、PECAM1、PTPRC、VIM、TGFB1が挙げられた。これらの候補分子と肺がんの臨床情報との対比を行った。今後の研究によりがん進展に寄与するがん細胞と間質細胞との相互作用について明らかになることが期待される。
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