研究課題/領域番号 |
20K09183
|
研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
千田 雅之 獨協医科大学, 医学部, 教授 (70333812)
|
研究分担者 |
林 啓太朗 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (10323106)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | スタチン / 抗腫瘍活性 / 胸腺癌 |
研究実績の概要 |
ヒト胸腺癌切除検体を用いた検討で、免疫組織染色にて癌組織にHMG-CoA還元酵素の発現を認め、正常胸腺上皮にはその発現を認めないことを確認した。 胸腺癌細胞株Ty82を用いたin vitroの実験において、スタチンのうちfluvastatinが最大の効果を持って細胞増殖を抑制し細胞死をもたらすことを明らかにした。fluvastatinは、HMG-CoA還元酵素を抑制することでメバロン酸の産生を抑制するが、fluvastatinを投与してもメバロン酸を添加することで細胞増殖は抑制されないことから、この細胞増殖抑制はメバロン酸の産生阻害によることを明らかにした。 また、メバロン酸の代謝物質であるgeranylgeranyl-pyrophosphate(GGPP)およびsqualeneの添加実験では、GGPPの添加で細胞増殖の抑制が解除される一方、squaleneの添加ではfluvastatinの増殖抑制効果が維持されることから、GGPP産生阻害によるタンパク質のisoprenylationがfluvastatinによる細胞増殖抑制の主な経路であることがわかった。 すなわち、fluvastatinは、細胞増殖に関わるメバロン酸から生成されsmall GTPaseに結合するisoprenoidであるGGPPの産生を阻害することで抗腫瘍活性を調整していることとなる。 この結果は、欧文専門誌Life Sciencesに公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Fluvastatinを用いることで、HMG-CoA還元酵素を標的とした胸腺癌培養細胞株に対する抗腫瘍活性が、我々の仮説通りに得られたことによる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、HMG-CoA還元酵素阻害が、実臨床において腫瘍のdormancyを得ることができるか観察研究が必要となる。 また、これまで我々はアミノ酸代謝の阻害としてLAT1阻害薬が腫瘍増殖を抑制することを示してきたが、今回脂質代謝阻害でも腫瘍増殖を抑制し得ることを明らかにしており、今後は、他の代謝経路(解糖系など)の阻害が胸腺癌に対し有効であるか検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は思いの外新規購入の物品費が少なかったことおよび旅費がCOVID-19により発生しなかったことにより支出が少なかった。次年度にはin vitro実験が進み使用額が増える見込みである。
|