研究課題/領域番号 |
20K09193
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
入江 克雅 和歌山県立医科大学, 薬学部, 准教授 (20415087)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 局所麻酔剤 / イオンチャネル / 構造解析 |
研究実績の概要 |
精製した原核生物由来のナトリウムチャネル(NavAb)の極低温電子顕微鏡観察のための凍結条件の検討を行った。タンパク質粒子の凝集が生じやすい試料であることが明らかとなり、複数の界面活性剤について詳細な条件検討を行った。タンパク質濃度、凍結前の乾燥時間の最適化により、観察可能な資料を作成することができた。一方で、観察試料中には未だタンパク質粒子の凝集が多く観察され、構造解析に十分なデータを収集するには至っていない。 そこで、電気生理実験から局所麻酔剤の結合に関わるさらなる残基を同定するためにNavAbの局所麻酔剤の結合に重要な残基であるThr206と相互作用する残基への変異導入をおこなったところ、カルシウムイオンなどの二価カチオンによる電流阻害を受ける変異を同定した。局所麻酔剤は結合時は陽イオン化していると考えられている。よって、この変異導入により生じる二価カチオンによる電流阻害機構を知ることは、局所麻酔剤との相互作用についても重要な知見が得られると考えられた。そこで、この阻害効果を調べるために、複数の変異体について電気生理実験により変異による阻害効果の違いを解析した。また、阻害効果の強くみられる変異体と弱い変異体の結晶化に成功し立体構造を決定した。 阻害効果を発生する変異はチャネル内腔の親水性を増加させる変異が多く、電流阻害を受ける変異体の結晶構造においても、カルシウムイオン由来の電子密度の増加がみられた。このことはチャネル内腔の親水性の増加が、カチオン性の物質を内腔にとどめる効果があることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の局所麻酔薬との結合構造の解析自体の進展ではないが、二価カチオンがイオンチャネル内腔に存在することによる電流阻害機構はイオンチャネルの機能阻害について幅広い知見を与えると思われる。この電流阻害機構について、電気生理実験による機能解析から親水的な環境がこの阻害に関わることを明らかにし、構造解析実験から複数の変異体の構造を決定し、阻害機構の分子機構を明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
電子顕微鏡による画像データの収集をさらに進め、高分解能三次元構造の構築を目指す。 明らかにした二価カチオンによる電流阻害の分子メカニズムについては、論文を執筆中であり今年度中の掲載を目指す。 チャネル内腔の親水性の増加と二価カチオンの内腔での安定性を調べるために分子動力学計算による解析法の確立をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
生じた次年度使用額は購入予定であった消耗品の納期の遅れによって発生した。 よって、納品され次第、仕様は完了する予定である。
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