研究課題
精製した原核生物由来のナトリウムチャネル(NavAb)の極低温電子顕微鏡観察のための凍結条件の検討を行い、分解能が5Å程度の単粒子解析によるチャネル構造を得ることができた。しかしながら、薬剤の結合様式を解析するには十分な分解能ではなかった。分解能が向上しない原因を調べるために、熱安定性の評価を行ったところ、タンパク質発現に使用する大腸菌株によって熱安定性に違いがあることが分かった。熱安定性が向上する大腸菌株ではタンパク質の発現量が少なく、この大腸菌株を用いたタンパク質の大量調整系の再構築が必要なことが分かった。電気生理実験から明らかにしたNavAbの局所麻酔剤の結合に重要な残基であるThr206と相互作用する残基の解析については、これまでにカルシウムイオンなどの二価カチオンによる電流阻害を受ける変異を同定し、結晶構造を決定している。これらの変異体では、チャネル内腔の親水性の増加が二価カチオンによる阻害を生み出す機構が示されており、この結晶構造が示唆するイオンの振る舞いを分子動力学計算により検証した。分子動力学計算において二価カチオンのような、価数の高いイオンの挙動を正確に再現することはこれまで困難であったが、イオンのパラメータの最適化により阻害現象の再現に成功した。この検証によって、阻害が生じる変異体ではチャネル内腔での二価カチオンの自由エネルギーが低下することが明らかとなった。これは、結晶構造が示す内腔における二価カチオンの結合を支持する結果である。以上の結果をまとめた論文を投稿し、現在は査読結果をうけ改定を進めている。
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Research Square
巻: - ページ: -
10.21203/rs.3.rs-2252854/v1
Journal of Molecular Biology
巻: 435 ページ: 168049~168049
10.1016/j.jmb.2023.168049