研究課題/領域番号 |
20K09195
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
小嶋 亜希子 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (50447877)
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研究分担者 |
北川 裕利 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50252391)
松浦 博 滋賀医科大学, 医学部, 理事 (60238962)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 麻酔薬 / QT延長 / チャネル病 / 遺伝子多型 / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
全身麻酔に用いられる吸入麻酔薬や静脈麻酔薬は様々なイオンチャネルに対して修飾作用を持ち、脳神経系に作用して麻酔作用を発揮するだけでなく、心血管系にも作用することで循環動態にも影響を与える。我々はこれまでに、吸入麻酔薬(セボフルランやデスフルラン)や静脈麻酔薬(プロポフォール)が心臓イオンチャネルに作用することで、心保護作用や陰性変時作用を発揮することを明らかにしてきた。さらに心筋の再分極過程に関わる緩徐活性型遅延整流性K+チャネル(IKs)の抑制作用が強い吸入麻酔薬セボフルランのQT延長作用が、急速活性型遅延整流性K+チャネル(IKr)機能低下時に顕著になる事をコンピューターシミュレーション法によって明らかにした。 IKsチャネルはプロポフォールによっても抑制を受けるが、その半最大抑制濃度は臨床使用濃度よりもはるかに高く、臨床上でのプロポフォールによる影響は少ないと考えられる。しかしこれは正常なIKsチャネルの場合であり、IKsを構成するチャネルタンパクをコードする遺伝子多型であるKCNE1-D85Nを有するIKsではプロポフォールによる抑制の感受性が上昇する。このことは、通常ではおこりにくいプロポフォールの心臓作用が遺伝的 多様性によって増強する可能性を示唆する。 さらに、房室結節機能におけるK+チャネル(IKsおよびIKr)の機能的役割についても検討し、交感神経刺激時の房室結節機能におけるIKsの貢献が大きくなることも示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト心室筋モデルであるO'Hara-Rudy dynamic modelを用いたコンピューターシミュレーション法を用いた活動電位やpseudo-ECGの再現手法について習得している。また、培養細胞に遺伝子多型や遺伝子変異を有したイオンチャネルを発現させ、麻酔薬の作用を電気生理学的に検討する手法についても、確立して行えている。 さらに、刺激伝導系である洞房結節細胞や洞房結節細胞の単離手法および電気生理学的実験手法についても確立して行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はヒトの心室筋とイオンチャネルの発現や分布が似ているモルモットの心室筋細胞や単離心臓において、薬剤的にK+電流を抑制したQT延長症候群モデルを作製し、麻酔薬によるQT延長作用や催不整脈作用(あるいは抗不整脈作用)などについて検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルス感染状況により、学会がWEB開催となったため、旅費を使用することがなかった。また新型コロナウイルス感染状況に応じて、動物を使用した実験回数が減少したため、これに伴う経費が予定よりも減少した。
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