研究課題/領域番号 |
20K09202
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
森 隆 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00336786)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 水素 / 出血 / グリコカリックス |
研究実績の概要 |
循環管理を含めた周術期管理の質は向上しているにも関わらず、危機的大量出血は周術期心停止の最大の要因である。出血による死亡は世界的な問題であり、米国では年間6万人以上、全世界では年間190万人の患者が出血により死亡していると推定され(文献1)、急性期管理を行う医療者にとって危機的出血による循環不全をコントロールし、患者予後を改善する事は重要な責務である。出血の際の循環血液量の減少に対して最初に行う対処法は輸液投与であるが、現在使用されている晶質液、膠質液は共に、過剰投与により合併症を引き起こす可能性があり、その使用が制限される。また大量出血を治療する際には、循環不全改善後の再灌流障害を軽減させることが非常に重要であり、これらの点からより効果的な輸液製剤の登場が求められている。 本研究の目的は、出血性ショックモデルラットを用いて水素含有輸液を投与する事による血行動態改善効果、血管内皮表面のグリコカリックス保護効果を検討する事である。出血性ショックモデル作成後、輸液投与を行い、微小循環の非侵襲的なモニタリングシステムであるSidestream Dark Field(SDF)撮影法を利用したGlycocheckによりグリコカリックス層の厚さの評価を行った。水素含有輸液投与によりグリコカリックス保護効果、心収縮力改善効果が得られ、出血性ショック後の生存率改善効果がみられた。特にグリコカリックス保護効果に関しては、他の輸液(生理食塩水、膠質液)より大きな効果がみられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出血性ショックモデルの作成を行った。モデル作成後、晶質液、膠質液、水素含有輸液の投与を行い、微小循環の非侵襲的なモニタリングシステムであるSidestream DarkField(SDF)撮影法を利用したGlycocheckによりグリコカリックス層の厚さの評価を行った。輸液投与を行わないコントロール群と比較して、輸液投与群(晶質液、膠質液、水素含有輸液)では生存率が有意に上昇した。またグリコカリックス層の厚さも保持された。水素含有輸液投与群において、生存率、グリコカリックス保護効果が最も高かった。
|
今後の研究の推進方策 |
水素含有輸液の出血性ショックに対する効果が明らかになった。今後、肺など組織において組織学的評価を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験がうまく進んでいるため、必要な物品購入費用が予想より少なかった。 次年度に繰り越し、引き続き物品購入費用にあてる予定である。
|