本研究は、気道確保困難時の外科的気道確保の一手段である輪状甲状間膜穿刺を安全・正確に行えるよう、超音波ガイドの輪状甲状間膜穿刺キットを開発するのが目的である。2020年度に研究を開始、穿刺針のプロトタイプ作成から始まり数回の改良を加えて、2022年度末に最終の改良を終え、解剖体(ご遺体)による穿刺実験を行い実際の臨床で応用可能な精度レベルに達した。その成果は、第70回日本麻酔科学会学術集会で発表した(2023年6月)。 現在、豚喉頭を用いたシミュレーション研究を行なっている。市販の輪状甲状間膜穿刺キット、メスを使用した外科的輪状甲状間膜切開と今回開発した超音波ガイド輪状甲状間膜穿刺キットを、穿刺成功率、施行時間、気管後壁の誤穿刺率の3点において比較するものである。2023年秋から実験を開始し、途中経過は、第71回日本麻酔科学会学術集会(2024年6月)に発表予定である。実験の終了は、本年の6月頃を予定している(この研究は、被験者が麻酔科医であり、時間的な制約がありデータ収集が難しい)。結果の中間報告では、穿刺成功率に関しては、3種類の方法で優劣はないが、市販の穿刺キットは施行時間が最も短いことがわかった。ガイドラインで安全性に優れているとされる外科的輪状甲状間膜切開は、市販の穿刺キットと同等の安全性(気管喉頭の誤穿刺率)であるが、重篤な気管後壁損傷が起きることがわかった、一方で、超音波ガイド輪状甲状間膜穿刺キットは安全性に最も優れ、施行時間はメスによる外科的輪状甲状間膜切開とほぼ同等であった。 超音波ガイド輪状甲状間膜穿刺キットは、超音波で正確に輪状甲状間膜を同定し穿刺できる。また、細くて短い穿刺針で穿刺後、ガイドワイヤーを挿入することで安全で確実な気道確保が行える。超音波ガイド輪状甲状間膜穿刺キットは、外科的気道確保器具として有用である可能性が高い。
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